秋香台本源氏物語系図

秋香台本源氏物語系図：源氏物語研究の礎となる貴重な古系図

秋香台本源氏物語系図は、古系図に分類される源氏物語系図の一つです。現在、秋香台文庫に所蔵されていることからこの名称で呼ばれています。現状は折本一帖ですが、巻本であった痕跡が残されています。外題、内題、奥書などは存在しません。

書写時期は近世初期と推定されますが、その内容は実隆本以前の古系図に分類され、特に九条家本系統の源氏物語古系図の代表的な完本として高く評価されています。

九条家本系統と秋香台本

平安時代末期から鎌倉時代初期に作成されたとされる九条家本は、当時の源氏物語の状況を知る上で貴重な資料です。しかし、現存するのは系譜の中間部分のみで、全体像を把握するには不十分です。そこで、九条家本に近く、欠落部分のない古系図が求められていました。

常磐井和子氏らの研究により、秋香台本は系譜部分に記載された人物数が133人と少なく、九条家本に見られる特徴的な人物呼称と一致するなど、九条家本に最も近い古系図であると結論づけられました。その後、「帝塚山短大本」という、巻本形式で血縁関係を線で繋ぐなど、より九条家本に近い古系図が見つかりましたが、秋香台本は依然として九条家本系統の代表的な古系図としてその重要性を保っています。

注目すべきは、近世に書写された秋香台本や帝塚山短大本が、それより古い古系図と比べても古い様式をよくとどめている点です。これは、新しい写本であっても、古い時代の姿を探る手がかりとなる可能性を示唆しています。

秋香台本の特徵

秋香台本は、他の系図と異なる独特の特徴を持っています。まず、血縁関係を線で繋ぐのではなく、各人物の肩に朱書きで「一」「二」「三」といった数字を付して示している点です。このような表現方法は、現存する古系図の中では秋香台本のみです。

また、「不入系譜」（血統不明瞭な人物のリスト）を有していますが、その人数は他の古系図と比べても非常に少なく、女性が2箇所に分かれて掲載されているなど、未整理で原始的な形態を保っていると考えられます。

系譜部分と記載人物数

系譜部分に記載されている人物数は133人です。常磐井和子氏の説「系譜に記載された人物が少ないほど古い」に従うと、秋香台本は帝塚山短大本と並んで、最も古い形態の古系図の一つに位置付けられます。

翻刻

秋香台本は『源氏物語古系図の研究』（笠間書院、1973年）に翻刻されています。この研究は、秋香台本を詳細に分析し、その価値を明らかにした重要な業績です。

まとめ

秋香台本源氏物語系図は、その古い様式と独特の特徴から、源氏物語研究において非常に重要な資料です。少ない人物数、数字による血縁関係の表示、未整理の「不入系譜」など、その原始的な様相は、源氏物語の成立過程や系譜の変遷を理解する上で貴重な手がかりを与えてくれます。今後も、この貴重な系図の研究が続けられ、源氏物語の世界をより深く理解することに貢献していくことでしょう。

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