秘密特許

秘密特許制度

秘密特許（ひみつとっきょ）とは、国家が発明の内容を秘匿する特許や特許出願のことを指します。私は特許制度における特異な側面の一つです。通常、特許制度では発明内容を公開することが求められますが、軍事技術や核技術など、安全保障に関連する発明については、公開すると危険が伴うため、その内容を隠すことが認められています。こうした発明を保護するための制度が、秘密特許制度です。

概要

特許制度の基本原則として、特許権が与えられた発明は基本的に公開され、その代償として独占的利益を得る権利が与えられます。しかし、51ヵ国で導入されている秘密特許制度は、こうした公開原則の例外であり、特に安全保障上の懸念がある発明に対して適用されます。例えば、TRIPS協定（知的財産権に関する貿易関連の側面を規定した国際的枠組み）では、第73条において安全保障のための秘密保持が許可されています。しかし、具体的な運用に関する基準や条件は、国によって異なります。

運用方法

秘密特許の運用方法は主に三つに分類されます。第一は特許付与で、出願時に秘密特許として扱われる場合です。ドイツ、イタリア、ロシア、カナダ、中国、ブラジルなどで採用されています。第二は審査凍結で、特許性の審査を一時的に止め、一定期間後に再開する方法です。この方法はアメリカ、フランス、イギリス、韓国、インドなどで見受けられます。三つ目は特例法規定で、特許法から外し、別の法律で扱うもので、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなどが対象国です。サウジアラビアでは特許の所有が政府に譲渡される特異な運用もあります。

外国出願制限と第一国出願義務

秘密特許と共に運用されることのある制度に、外国出願制限があります。これは、国内で発明された技術を国外で特許出願する際に、政府の許可を得る必要があるというものです。また、第一国出願義務は、各国で発明された技術の初めての出願先をその国の特許庁にすることを義務付ける制度です。これを現在実施しているのはアメリカだけです。

問題点

秘密特許制度は、制度的には多くの国で認識されていますが、いくつかの問題が存在し、その適用が慎重に行われています。まずは、発明者にとっての不利益です。秘密特許に指定されると、その技術は公開されず、他の発明者が同様の技術を開発しても特許料を得られません。また、審査に関しても特別な手続きが必要で、守秘義務も課せられます。

次に、周辺特許の管理です。多くの製品は複数の特許技術に依存しており、一つの発明を秘密特許にしても、関連する他の発明から技術内容を推測されることもあります。これによって、秘密特許の影響範囲が広がる可能性があります。

最後に、人材の固定化も問題です。秘密特許の発明者には守秘義務が課せられ、新たな技術者の投入が難しくなるため、人材の流動性が失われ同分野の技術革新が滞ります。

日本における秘密特許

日本においては、かつて専売特許条例や旧特許法の下で秘密特許制度が設けられていましたが、これらは戦後に廃止されました。その後、日本では秘密特許に類する制度はなかったものの、経済安全保障上のリスクを考慮し、2024年から特許出願非公開制度が導入されることになりました。

この特許出願非公開制度は、安全保障上の問題がある発明に対して、その出願公開と査定を留保するものです。特定の技術分野（例：ステルス技術、無人航空機など）が対象となり、出願のスクリーニングが行われます。今後、特定の技術が国家の安全保障にどう影響するかに対する注目が集まるでしょう。

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