秘書・恵純 18歳

『秘書・恵純 18歳』：仕事よりアフター6重視？18歳社長秘書のドタバタ奮闘記

鴨居まさね氏による漫画作品『秘書・恵純 18歳』は、1990年代後半に集英社の雑誌『YOUNG YOU』で連載された、個性豊かなキャラクターと軽妙なストーリー展開が魅力のコメディ作品です。

主人公は、大学受験に失敗した18歳の恵純。父親が社長を務める機器設計メーカー「オアシス田中」の社長秘書という、彼女には想像もしていなかった役職に就くことになります。恵純の仕事への取り組み方は、ズバリ「適当」。仕事は手抜きで済ませ、プライベートを満喫することに重点を置いています。この、仕事よりもプライベートを優先する姿勢が、物語全体に軽妙な笑いを提供しています。

しかし、この作品は単なる「仕事しない系女子」の物語ではありません。恵純を取り巻く個性的なキャラクターたちが、物語に深みと面白さを与えています。

例えば、転職を繰り返してきた久米は、恵純の仕事ぶりを面白く感じ、初めて「居続けたい」と思える職場だと感じています。一方、恵純と仲が良い和田は、容姿にコンプレックスを抱えながらも、恵純との友情を通して成長していきます。また、女装ショーが恒例の野々村や、不倫経験のある西中島など、個性豊かな社員たちが織りなす人間模様は、読む者を飽きさせません。

恵純の父親である田中社長や、その他の社員たちも、それぞれに個性があり、恵純との関係性を通して物語に彩りを添えています。特に、高津や岸など、年齢や経歴が謎めいている人物の存在は、読者の好奇心を刺激し、物語への関心を一層深めます。

当初は、恵純が20歳で結婚するまでを描く予定だったそうですが、作者の他の作品との連載が重なったため、19歳編の番外編『秘書・恵純 19歳 きのうの明日は』が掲載されたのみで、物語は幕を閉じました。しかし、この短いながらも濃密なストーリーは、読者に多くの印象を残し、多くのファンを獲得しました。

『秘書・恵純 18歳』は、単なるコメディ作品としてだけでなく、現代社会における仕事や人間関係、そして成長といったテーマを軽妙なタッチで描いている作品と言えるでしょう。登場人物それぞれの個性、そして恵純の成長や恋愛模様といった要素は、読者に共感や笑いを提供し、物語全体に奥行きを与えています。また、1話ごとに異なる社員を主役とする構成は、会社という組織における多様な人間模様を描き出す上で効果的です。

全1巻のコミックスに加え、文庫本も発売されており、手軽にこの作品の世界観を楽しむことができます。もし、軽妙な笑いと個性豊かなキャラクター、そして少し切ない物語の余韻を楽しみたいのであれば、『秘書・恵純 18歳』は必読の作品と言えるでしょう。

単行本だけでなく、いくつかの短編作品も収録されています。これら短編作品も、恵純や周りの人物たちのキャラクターをより深く理解する上で役立つでしょう。短編「スキンシップ・フェスティバル」、「明日まで待てない」、「オカメと巻き毛」なども合わせて読むことで、よりこの作品の世界観を堪能できるでしょう。

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