稟議書

稟議書とは

稟議書とは、組織内での意思決定プロセスである稟議を行うために作成される文書です。組織によっては、起案書や立案書と呼ばれることもあります。稟議は、会議に比べて時間とコストを削減できるため、日常的な業務に関する意思決定や簡易な決裁に広く用いられています。

稟議の目的とプロセス

組織における意思決定は、原則として会議などの合議制で行われます。しかし、会議は時間や費用がかかるため、日常業務や簡易な決裁については、決裁権者に一任されることが多くあります。ただし、決裁権者のみに判断が集中すると、個々の案件に対する検討がおろそかになる可能性があります。また、決裁前に複数の関係者が承認していれば、その後の業務執行もスムーズに進みます。

そこで、決裁権者が決裁を行う前に、関係者に回覧して承認を得る仕組みが稟議です。担当者が作成した稟議書を関係者が確認し、承認のサインや捺印を行います。最終的な決裁権者は、関係者の承認を確認した上で決裁を行い、組織としての意思決定が完了します。このプロセスを通じて、より慎重かつ幅広い視点での検討が可能となり、意思決定の質を高めることができます。

また、稟議書は、組織における意思決定の内容と過程を記録する重要な役割も担います。これにより、業務遂行上の便宜が図られるだけでなく、後日監査や調査が必要になった際にも、客観的な証拠として活用できます。

稟議書の書式と内容

稟議書の書式は、組織ごとに独自に定められています。一般的には、以下のような項目が含まれます。

件名: 稟議の内容を表すタイトル
起案日: 稟議書を作成した日付
起案者: 稟議書を作成した担当者
所属: 起案者の所属部署
承認者: 稟議に関わる関係者
決裁者: 最終的な決裁を行う権限者
稟議内容: 稟議の具体的な内容、理由、目的などを記載
添付資料: 見積書、契約書などの関連資料

例えば、物品購入に関する稟議書の場合、購入先の業者名、予算額と実績額の差額などを記載し、見積書を添付します。また、人事異動や契約締結など、組織の決裁を必要とするあらゆる事柄に稟議書が用いられます。稟議は、起案者から始まり、上司の承認を経て、最終的には決裁権者の承認を得ることで完了します。決裁権者は、通常、金額に応じて定められています。

稟議書の保管と管理

稟議書は、企業の内部文書として、総務部などの部署が保管・管理することが一般的です。日本の法律では、稟議書の保存期間は定められていないため、各組織が内部規定で期間を決定しています。適切な保管・管理体制を整備することにより、紛失や改ざんのリスクを低減し、必要な時に速やかにアクセスできるようにすることが重要です。

稟議書の監査

稟議書は、内部統制評価や業務監査の対象となることがあります。監査では、決裁権限規定に基づいた適切な決裁が行われているか、稟議内容が適切に文書化されているか、適切に整理・保管されているかなどを検証します。また、会計監査や税務調査においても、会計処理や税務処理の根拠となる事実（意思決定の経緯、取引の目的など）を把握するために、稟議書が閲覧されることがあります。

まとめ

稟議書は、組織の意思決定プロセスを円滑に進めるための重要なツールです。適切な運用により、業務の効率化、透明性の確保、リスク管理に貢献します。組織の規模や特性に応じて、書式や運用ルールを最適化することが求められます。

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