種まく子供たち 小児ガンを体験した七人の物語

『種まく子供たち 小児ガンを体験した七人の物語』は、作家・佐藤律子氏が編纂し、2001年にポプラ社から出版されたノンフィクション作品です。この書籍は、小児がんを体験した7人の子供たちの闘病記であり、彼らとその家族が病と向き合い、生きる姿を克明に描いています。7人の内訳は、がんを克服して元気になった3人と、残念ながらがんで亡くなった4人です。

出版の背景

佐藤氏自身も、1997年に16歳の次男を小児がんで亡くしており、その次男が闘病中に記録した手記が、書籍出版のきっかけとなりました。自費出版した手製の冊子が大きな反響を呼び、同じように病と闘う子供たちや家族を応援したいという思いから、本書の企画がスタートしました。当時、小児がんの体験記が少なかったことも、出版を後押しする理由の一つでした。

出版までの道のり

企画当初は協力者探しに苦労し、出版社にも7社に断られるなど、困難な道のりでした。しかし、佐藤氏の長女の協力により、闘病中の子供たちを精神的に支えるウェブサイト「種まく子供たち」が立ち上げられ、学会会場でのチラシ配布などの地道な活動を通して、ようやく7人分の体験記が集まりました。企画から出版まで、約3年半の歳月を要しました。

タイトルに込められた想い

書籍のタイトルには、闘病している子供たちが世の中に多くの「種」を蒔き続けている、という想いが込められています。「元気の種」「勇気の種」「思いやりの種」といった希望の種が、人々の心の中で芽生え、育っていくことを願って名付けられました。また、小学生や子供への配慮として、漢字にはふりがなが付けられています。

収録された物語

本書に登場する7人の子供たちのうち、4人は残念ながら亡くなっています。その中には、テレビドラマ『命燃えて』の原案となった闘病記『ではまた明日』の著者・西田英史さんや、闘病記『私の運命』を著した加藤祐子さんも含まれています。佐藤氏自身も、次男の死後、深い悲しみの中、次男の録画を何度も見ながら手記を執筆しました。

社会的影響

本書は、鳥取県立図書館で「生き方情報」を提供する図書として紹介されたり、テレビドラマ『3年B組金八先生』で紹介されたりするなど、全国的な話題となりました。また、骨髄バンクのドナー登録を奨励するミュージカル『サンキュー・命をありがとう』では、本書に登場する子供たちが劇中の役として登場し、小児がんへの理解と命の大切さを訴えました。

ベストセラーと文庫版

本書は、2003年までに35万部を売り上げ、多くの読者に感動を与えました。2006年には角川文庫から文庫版が出版され、病気を克服した子供たちのその後や、病名を告げられていなかった子供が成長後に現実を受け入れて生きる姿などが報告されています。文庫版では、タイトルの「子供」の「供」が平仮名の「ども」に変更されています。

著名人からの評価

女優の東ちづるさんは、本書をクリスマスプレゼントとして選定し、「障害や病気をもった人たちを社会的弱者といいますよね。私はそういう考え方はおかしいと思っているんです。数が少なくても弱くはないと、子どものころから知ってほしくて」と評価しました。歌手の平原綾香さんも、本書に触れ、「いまを一生懸命生きる子供たちから勇気や元気の種をいただきました。私も歌で元気の種をまいていきたい」と感想を述べています。

テレビドラマ化

本書に収録されたエピソードの一つ、加藤祐子さんの手記は、2001年に日本テレビ『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』内で『最後の夏休み』としてテレビドラマ化されました。安倍なつみさんが主演を務め、24.7%の高視聴率を記録しました。ドラマ放映後には、書籍の売り上げが伸び、難病の子供たちへの援助を呼びかける活動も行われました。


『種まく子供たち』は、小児がんと闘う子供たちの勇気と希望を描いた感動的な作品であり、多くの人々に生きる意味を問いかけ、勇気を与え続けています。

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