種多様性

種多様性（しゅたようせい）

種多様性とは、特定の地域や生態系に存在する生物群集において、どれだけ多様な生物種が存在し、かつそれらの種がどれほど均等な個体数比率で存在しているかを示す概念です。これは、地球上の生命の豊かさを示す「生物多様性」を構成する主要な要素の一つであり、生態系の健康状態や機能と密接に関わっています。

多様性を評価する要素

種多様性を評価する際には、主に以下の二つの側面が考慮されます。

種の豊富さ (Species richness)
群集内に存在する生物種の総数のことを指します。単純に種の数が多いほど、その群集は種の豊富さという点で多様であると評価されます。

均等度 (Evenness / Equability)
群集内のそれぞれの種の個体数が、どれだけ偏りなく分布しているかを示す指標です。たとえ種の豊富さが同じ群集であっても、特定の種の個体数が圧倒的に多く、他の種がごくわずかしかいない場合と、全ての種の個体数がほぼ均等である場合とでは、後者の方が均等度が高いと見なされ、結果として多様性も高いと評価されます。

したがって、種多様性は単に種の数を数えるだけでなく、「種の豊富さ」と「均等度」の両方を総合的に評価することが重要となります。

空間スケールによる分類

種多様性の議論では、対象とする空間の範囲によって、以下の三つの概念に分類されることがあります。

α多様性 (alpha diversity)
ある一つの特定の環境や生息地内における種多様性を指します。これは最も一般的な意味での種多様性の捉え方です。

β多様性 (beta diversity)
異なる複数の環境や生息地の間での種構成の違いや類似性を示します。環境Aと環境Bで生息する種が大きく異なる（種の入れ替わりが多い）ほど、β多様性が高いと評価されます。これは、異なる環境間に特異的な種が存在することを示唆します。

γ多様性 (gamma diversity)
対象とする全ての環境や生息地を合計した、より広い地域全体における種多様性を指します。複数の地域にわたる全体の種の豊富さを示す指標とも言えます。β多様性が高い（環境間の差が大きい）ほど、同じα多様性であってもγ多様性は高くなる傾向があります。

多様度指数

種多様性を定量的に評価し、異なる群集間や時間経過による変化を比較するために、様々な「多様度指数」が考案されています。代表的な指数として、シンプソン指数とシャノン指数があります。

シンプソン指数 (Simpson's diversity index)
この指数は、群集の中から無作為に選んだ2つの個体が同じ種である確率に基づいて計算されます。特定の種に個体数が偏っている（均等度が低い）群集ほど、この確率が高くなるため、指数の値は小さくなります。一般的には、1からこの確率を引いた値を用いることが多く、多様性が高いほど1に近い値をとるようになります。主に優占種（個体数の多い種）の影響を強く反映する傾向があります。

シャノン指数 (Shannon index)
情報理論を応用して考案された指数です。群集構造の不確実性（次に観察される個体がどの種であるか予測しにくいほど多様性が高いと考える）に基づいて計算されます。種の豊富さだけでなく、均等度も考慮に入れますが、比較的希少種の存在も反映しやすいとされています。主に個体数の割合の対数を用いて計算されます。

これらの多様度指数を用いることで、客観的に群集の多様性を比較・評価することが可能となります。

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