稲山嘉寛

稲山嘉寛の生涯と業績

稲山嘉寛（いなやま よしひろ、1904年1月2日 - 1987年10月9日）は、日本の実業家であり、経済界に多大な影響を与えた人物です。彼は第5代経済団体連合会（経団連）会長を1980年から1986年まで務め、経済界でのその手腕が高く評価されました。

出自と教育

稲山は東京の銀座に生まれ、銀行家の家系に育ちました。父は『稲山銀行』の頭取であり、彼の家族は金融業に深く関わっていました。しかし、稲山自身の学業は順調ではなく、多くの入学試験や就職活動で苦戦しました。彼は小学校から中学、高校と多くの学校に落ち続け、最終的には東京帝国大学の経済学部に無試験で入学することに成功しました。

就職活動ではさらに試練が待っていました。大蔵省や日本銀行など、名だたる機関に対して何度も不合格となり、ようやく商工省からの内定を獲得。これが彼のキャリアの出発点となりました。

製鉄業界での躍進

稲山は1927年に官営八幡製鐵所に入社し、徐々にそのキャリアを築いていきました。彼は販売畑を歩み、1946年には日本製鐵の営業部長、その後は八幡製鐵の常務を経て、1962年に社長となります。彼の手腕によって、八幡製鐵と富士製鐵の合併が実現し、新日本製鉄（現在の日本製鉄）が誕生しました。この合併は、当時の鉄鋼市場の激しい競争を鑑みての、価格安定のための重要な決断でした。

彼の行動原理は常に「競争より協調を目指す」というものであり、この信念は「ミスター・カルテル」との異名を得る背景にあります。稲山は新日鉄の初代社長として、企業の発展に大きく貢献しました。

経団連会長としての業績

1980年には経団連会長に就任しますが、彼の任期中には米国や欧州との間での貿易摩擦問題が発生しました。稲山は国際協調を重視し、輸出自主規制の推進や日本経済の再建に向けた行動をとりました。また、彼は「行革推進5人委員会」のメンバーとして、財政再建に取り組みました。1982年には勲一等旭日大綬章を受章し、その功績が讃えられました。

韓国への貢献

稲山は韓国の浦項総合製鉄に対して技術供与を行い、朴泰俊社長と親しい関係を築きました。朴社長は稲山の影響を大きく受けたとされ、彼の支援があって浦項製鉄の成功に繋がったと語っています。稲山は、韓国の製鉄所に技術を導入することに際し、日本の先進技術を惜しみなく提供し、その協力関係を深めました。

私生活

若い頃から洒脱な一面を持ちながらも、私生活は質素であり、長い間世田谷の新日鉄社宅に住み続けました。彼の人生は、企業家としての成功と家庭人としてのバランスを見事に保っていました。1987年、稲山は肺癌により83歳で逝去しましたが、その業績は今でも多くの人に影響を与えています。

まとめ

稲山嘉寛は日本の経済界において重要な役割を果たした実業家であり、彼の信念と行動は今もなお多くの人々に受け継がれています。彼の経歴は、試練を乗り越えた成功の象徴と言えるでしょう。

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