稲岡大志

稲岡大志

稲岡 大志（いなおか ひろゆき、1977年2月26日 - ）は、日本の哲学者であり、現在、大阪経済大学経営学部で准教授を務めています。彼の研究分野は広範にわたり、伝統的な哲学テーマから現代社会や文化に関わるテーマまでを横断しています。

研究分野

稲岡氏の哲学研究は、17世紀ドイツの哲学者ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツに関するものが主軸となっています。特にライプニッツの数理哲学、すなわち数学と哲学の関係性や、空間、幾何学、実体といった概念をめぐる考察に深く取り組んでいます。これらの研究成果は、彼の単著である『ライプニッツの数理哲学−−空間・幾何学・実体をめぐって』に結実しています。

ライプニッツ研究に加えて、数学や論理の哲学、さらには現代的なテーマであるポピュラカルチャーの哲学やスポーツ哲学・倫理学といった分野も専門としています。近年は、人間関係や社会基盤における「信頼」の研究、哲学教育の方法論に関する研究、そして哲学をより身近なものとして捉えるポピュラー哲学の研究にも積極的に取り組んでいます。

経歴

1977年に大阪府茨木市で生まれた稲岡氏は、神戸大学大学院文化学研究科にて哲学を修め、2008年に博士課程を修了し、博士（学術）の学位を取得しました。その後、神戸大学大学院人文学研究科にて助教を務めたほか、神戸大学、甲南女子大学、関西大学などで非常勤講師として教鞭を執りました。2019年4月からは大阪経済大学経営学部の准教授として、研究と教育に携わっています。

研究活動における業績として、2014年11月には日本ライプニッツ協会より研究奨励賞を受賞しています。これは、ライプニッツの空間論の展開を詳細に分析した論文「実体の位置と空間の構成――ライプニッツ空間論の展開の解明に向けて」が高く評価されたものです。

主な業績

稲岡氏の研究成果は、単著、共著、多数の論文、翻訳など様々な形で発表されています。

• - 単著としては、前述の『ライプニッツの数理哲学』があります。

• - 共著としては、『信頼を考える』においてホッブズにおける信頼の問題を、『ライプニッツ読本』においてライプニッツの数学の哲学に関する章を執筆しています。

• - 論文は、ライプニッツ哲学における幾何学の基礎、神の存在証明、ユークリッド批判、点と最小者、空間の構成、モナドなどを扱ったものや、スポーツにおける特待生問題の倫理学的考察、アニメや声優といったポピュラカルチャーに関する哲学的な試論、図形推論と数学の哲学の関係など、多岐にわたります。国内外の査読付き学術誌に多数掲載されており、一部には招待論文も含まれています。

• - 翻訳活動も精力的に行っており、環境倫理、解釈学的倫理学に関する主要な文献のほか、ライプニッツ自身の著作や、ライプニッツ哲学に関する海外の研究者の論文を日本語に翻訳し、国内の研究者に広く紹介しています。

これらの業績は、彼の研究分野の幅広さと深さを示しています。

教育への貢献

教育者として、稲岡氏は単に講義を行うだけでなく、学生が主体的に学び、社会と関わる機会を提供することにも力を入れています。大阪経済大学で担当している「地域企業連携実習」はその代表例です。この授業では、経営学部の学生たちが大阪市内の中小企業を実際に取材し、その企業のWikipedia項目を作成・改訂するという実践的なフィールドワークを行います。

この取り組みは、学生に「知の担い手」としての自覚を促し、公共性の高い情報を作成するスキルを養うことを目的としています。同時に、参加企業にとっては最もアクセスされやすい媒体の一つであるWikipediaを通じて情報発信ができるというメリットがあります。このように、この授業は学生と地域企業双方に利益をもたらす活動として企画・運営されており、大学と地元企業を結びつけ、地域社会に貢献できる人材を育成することを目指す「志プロジェクト」とも連携しています。

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