稲荷町テクニカルセンター

稲荷町テクニカルセンター

富山地方鉄道の稲荷町テクニカルセンターは、富山県富山市稲荷町に位置する同社最大の車両基地です。富山地方鉄道線の要衝である稲荷町駅に隣接しており、鉄道運行にとって極めて重要な役割を担っています。かつては稲荷町車両基地という名称で親しまれていました。

役割

このテクニカルセンターには、富山地方鉄道が運行するすべての電車が一括して配置されています。ここでは、車両の日々の点検、定期的な検査、故障時の修理、そして車両の清掃など、幅広いメンテナンス業務が行われています。また、夜間や運用されない車両の留置場所としても機能しています。車両が安全かつ安定して運行するために必要不可欠な、保守管理の拠点であり、富山地方鉄道の安全輸送を最前線で支える心臓部と言えるでしょう。

歴史

稲荷町テクニカルセンターの開設は、1966年（昭和41年）11月に遡ります。この時、稲荷町駅に隣接する形で、車両の検査・修理を行う工場、車両を収容する車庫、そして列車の運行を集中管理するCTC（列車集中制御装置）センターなどが一体的に整備されました。

施設の開設には、富山地方鉄道が過去に複数の鉄道事業者や軌道事業者が統合して成立したという歴史的背景が深く関わっています。統合以前は、路線ごとに車両基地が分散しており、例えば立山線の車両は南富山に、本線の車両は上市や電鉄桜井（現在の電鉄黒部）に配置されていました。こうした分散体制から脱却し、より効率的な鉄道運営を実現するため、鉄道管理の主要機能を電鉄富山駅周辺とこの稲荷町地区に集約する方針が打ち出されました。その方針に基づき、約2億円の予算が投じられて、この近代的な車両基地が建設されたのです。

開設後も施設の拡充は進み、1985年（昭和60年）3月には新たな変化がありました。富山軌道線の車両基地であった南富山車両区の機能が一部移転してきたことに伴い、路面電車の定期検査やメンテナンスを行うための施設が、テクニカルセンター内に新たに設けられたのです。これにより、鉄道線用電車だけでなく、軌道線用の路面電車もこの施設で包括的に保守管理されるようになり、その役割はさらに拡大しました。

施設構成と重要性

施設内には、大規模な検査・修繕に対応できる工場設備、多数の車両を収容できる広大な車庫、そして富山地方鉄道全線の列車運行をリアルタイムで監視・制御する司令所（CTCセンター）などが集約されています。これらの機能が連携することで、効率的かつ安全な車両運用とダイヤ管理が可能となっています。

稲荷町テクニカルセンターは、富山地方鉄道の全ての車両を管理し、日々の安全運行を支える上で、欠かすことのできない最重要拠点です。その歴史は、同社の経営合理化と安全対策強化への取り組みを物語っており、現在も富山の公共交通を支える基盤として機能し続けています。

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