稲葉幾通

稲葉 幾通（いなば ちかみち）

稲葉幾通は、豊後国臼杵藩の第13代藩主として知られています。彼の生涯は短かったものの、その経歴には多くのドラマが隠されています。彼は文政4年（1821年）に生まれ、兄の尊通が亡くなった後に藩主として擁立されました。当時、彼はわずか7歳という若さであり、藩政は隠居中であった父に委ねられていました。このような状況は、若干の不安を抱えつつも、彼の人生の出発点をかたくなに支えていました。

藩主としての生活

藩主の座に就いてからも、烏有に近い運命が彼を襲います。生来の健康状態が優れていたわけではなく、体調が悪化し始めた彼は、特に子どもに恵まれなかったことが重くのしかかりました。天保7年（1836年）、中津藩の奥平昌高の六女と結婚し、正式な正室ができたものの、残念ながら彼らの間には子どもがいませんでした。また、側室との間に設けた一男一女も夭折してしまうという悲劇が続きました。

この状況にあって彼は、藩の存続について真剣に考えざるを得なくなりました。そこで、万が一の際に備えるため、天保13年（1843年）に幕府に対して甥の冨太郎を仮養子として迎える手続きを行います。彼自身の体調は芳しくなく、この決断は不得手な統治からの逃避とも言えるかもしれません。この結果、彼は一層の安心感を求めていったようです。

短命の結末

残念ながら、彼の健康は改善されることはなく、同年の12月17日、彼はわずか29歳の若さでこの世を去ります。その死は、藩にとっても大きな打撃となりました。藩主としての実務を何一つ成し遂げられぬまま、不安を抱えたままの死去は、藩政の次代に新たな課題を突きつけることとなりました。

後に、仮養子として手続きを行った冨太郎が観通の名を受け継ぎました。これにより、稲葉家は彼の名のもとに新たな歴史を刻むこととなりますが、幾通の短命の生涯は、やはり儚いものでした。

系譜について

彼の家族に関しても、いくつかの重要なポイントがあります。幾通の実父であるのは稲葉雍通であり、養父には稲葉尊通が名を連ねます。彼の正室であるサク姫は、奥平昌高の娘でした。幾通自身の家系は、豊後国臼杵藩の歴史の中で非常に特殊な位置を占めていると言えるでしょう。このように、彼の人生は多くの点で語り継がれるべきものがあります。

もう一度検索