稽古屋

稽古屋（けいこや）

「稽古屋」は、上方落語、東京落語ともに存在する演目です。初代桂小文治、2代目桂小文治、5代目桂文枝、5代目古今亭志ん生などが得意としました。特に「はめもの」が効果的に使われる音曲噺として知られています。

あらすじ

物語は、喜六が甚兵衛に「女子にもてたい」と相談するところから始まります。喜六の容姿、性格、財産などを聞いた甚兵衛は、彼にはもてる要素がないと判断し、稽古屋の師匠を紹介することにします。甚兵衛は、自身の芸名である「一二三」を名乗るように喜六に指示します。

稽古屋にやってきた喜六は、踊り「娘道成寺」の稽古を邪魔します。そして、甚兵衛の紹介で来たことを告げ、自分も踊りを教えてほしいと頼み込みます。しかし、師匠は「もてる踊り」などないと言い放ちます。

宇治の名物蛍踊り

噺の中で登場する「宇治の名物蛍踊り」は、全裸で全身を黒く塗り、尻の穴に火のついた蝋燭を挟んで踊るという奇抜なものです。舞台を暗くし、「宇治の名物蛍踊りの始まり始まり」という口上の後、賑やかな下座に合わせて踊り、最後は屁で蝋燭の火を消します。

この踊りには、スカトロ的な要素も含まれています。しかし、桂文枝のような上品な芸風で演じると、汚さを感じさせません。東京の桂小文治は、この部分をスラップスティック風に変えています。

東京の「稽古屋」

東京の「稽古屋」は、大筋は上方と同じですが、小唄を歌うなど、音曲噺の色彩がより強く出ています。サゲ（オチ）も異なり、師匠から上方歌の「すり鉢」を稽古するように言われた男が、屋根の上で「煙が立つ」と大声で稽古するのを、通りかかった人が火事と勘違いするというものです。

噺の眼目

「稽古屋」は、「はめもの」との呼吸、踊りの振り付けなど、高度な邦楽の要素が求められる演目です。また、師匠の演じ方が噺の出来を大きく左右します。桂文枝と桂小文治は、音曲噺を得意とし、女性の描写にも優れており、それぞれ独自の「稽古屋」を作り上げました。

NHKに保存されている小文治の「稽古屋」のビデオでは、髪の毛を気にしながら色気たっぷりに稽古をつける師匠の様子が記録されています。

「稽古屋」は、単なる滑稽噺にとどまらず、日本の伝統芸能の要素を巧みに取り入れた、奥深い演目と言えるでしょう。

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