積極 -愛のうた-

谷川史子の漫画短編集『積極 -愛のうた-』は、読む人の心にそっと寄り添うような、温かい作品集です。収録されているのは、「積極」「スパイラル ホリディ」「風の道」の3編で、それぞれ異なる愛の形を描いています。

積極

女子大の国文学科助手である村主美幹は、卒業を間近に控えていました。彼女は、亡き妻を忘れられない老教授・鳥野に、秘かに恋心を抱いています。そんな中、同棲していた恋人に別れを告げられた美幹は、教授と居酒屋で飲み明かすことに。翌朝、目を覚ますと、そこは教授の家でした。帰り道、教授は美幹に青林檎を一つ差し出します。それは、決して教え子と親しくすることのなかった鳥野教授の、秘めた想いの表れなのでしょうか。河野裕子の短歌をモチーフにした、切なくも美しい物語です。登場人物の名前がフィギュアスケート選手から取られている点も、作者の遊び心を感じさせます。

スパイラル ホリディ

鳶田と円は、今日結婚式を迎える幼馴染です。2人を取り巻くのは、幼馴染の珠々子、タクシードライバーの蔓谷、シェフの三ノ輪とその妻めぐる。様々な勘違いが巻き起こる、ドタバタコメディです。結婚式というおめでたい日を舞台に、登場人物たちが織りなす騒動は、笑いと温かさに満ちています。それぞれのキャラクターが生き生きと描かれており、読んでいるうちに自然と笑顔がこぼれるでしょう。

風の道

由子は、10年前に出会った彼と同棲生活を送っています。しかし、出会ったきっかけも定かではなく、何となく倦怠期のような日々が続いていました。そんな2人の関係に、変化は訪れるのでしょうか。長く連れ添ったカップルの、日常の機微を描いた作品です。過ぎ去った時間の中で薄れていく記憶や感情、それでも繋がっている2人の絆が、丁寧に描かれています。

『積極 -愛のうた-』は、恋愛の喜びや切なさ、そして人生のほろ苦さを、優しく包み込むような作品集です。谷川史子の繊細なタッチで描かれたキャラクターたちは、読者の心に深く残ることでしょう。それぞれの物語は独立していますが、全体を通して、愛とは何か、人との繋がりとは何かを考えさせられる作品となっています。ぜひ、手に取って、それぞれの愛の物語に触れてみてください。

もう一度検索