空のグラス (デ・ホーホの絵画)

空のグラス

『空のグラス』は、17世紀オランダの黄金時代を代表する画家ピーテル・デ・ホーホが1650年から1655年の間に描いた油彩画です。作品は1958年に個人コレクションからボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館に寄贈され、現在も同館にて保存されています。この作品は以前、ハブリエル・メツーに帰属されていましたが、後にデ・ホーホの創作と認識されています。

作品について

デ・ホーホの初期の作品は、彼がロッテルダムに住んでいた1653年から1654年にかけて制作されたものが多いです。本作『空のグラス』は、同時代の画家ヘラルト・テル・ボルフの「グラスにワインを注ごうとする男を止める若い女」に影響を受けていると考えられています。この絵には、テーブルを囲んでいる3人の人物が描かれており、女が兵士にワイングラスを手渡す様子が丁寧に表現されています。背景には他の人物がカードを遊ぶ姿が見られ、日常生活の一コマを切り取ったかのような雰囲気を醸し出しています。

デ・ホーホの作品に見られる茶色や黄色の温かみのある色彩は、彼のスタイルがどのように形成されたかを示しています。また、作品にはキアロスクーロ技法が見て取れ、光と影の対比が人物と背景に深みを与えています。色彩の選択や技法は、アムステルダムやハールレムで活躍していた他の画家たちの影響を伺わせますが、デ・ホーホが描く明るい人物像は特にロッテルダムの画派との関連性が強いと言えるでしょう。

歴史的背景

この作品については1908年にホフステーデ・デ・フロートによって研究が行われ、詳細な記載が残っています。当時はその内容について注目され、特に絵の中の女が兵士にグラスを渡す場面は強い印象を与えています。また、デ・ホーホの他の作品とも類似性があり、彼のスタイルがこの時期において確立されていたことが明らかです。

絵画は長い歴史の中でオークションにかけられた経緯もあり、1770年にはデン・ハーグで売却され、1783年にも同地で別のオークションで再度取引されました。作品は当初メツーのものとされていたため、彼のスタイルを持つとされる絵画が数多く存在していましたが、最終的にはデ・ホーホの作品として認識されています。

現在の所蔵と評価

現在『空のグラス』はロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館に所蔵されており、訪れる多くの観客に楽しませている作品です。美術館はデ・ホーホの作品を通じて、彼の独特なスタイルや当時のオランダの生活を垣間見せることに寄与しています。この絵は、単なる静物画ではなく、視覚的な物語を語る力を持っており、観る人々にさまざまな解釈を促す魅力を秘めています。オランダ美術の中でも高く評価されるデ・ホーホの才能を感じる作品であると言えるでしょう。

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