空中都市008

空中都市008（くうちゅうとしゼロゼロエイト）

『空中都市008』は、小松左京によるSF児童文学で、副題は『アオゾラ市のものがたり』です。この作品は1968年に『月刊PTA』に連載が始まり、1969年に書籍として刊行されました。また、NHKの人形劇としても映像化され、多くの子供たちに親しまれました。

物語は、21世紀のアオゾラ市を舞台に、星夫くんや月子ちゃんたちがさまざまな冒険を繰り広げる様子を描いています。作品を通して、未来の都市生活や交通手段、宇宙旅行など、科学技術がもたらす希望に満ちたビジョンが表現されています。しかし、物語の中では、管理コンピュータのトラブルにより都市機能が混乱するエピソードもあり、未来の暗い側面も示唆されています。

物語は短編形式で構成されており、それぞれの章の終わりには当時の最先端の科学や技術についての解説が付いているのも特徴です。中には、現代の技術を予見しているような描写も多く見られ、テレビ受像機能を持つ携帯電話や自動通訳機、環境技術の進歩など、興味深い未来像が描かれています。それだけでなく、ノーベル賞受賞者田中耕一氏の愛読書としても注目を浴び、一時的に話題となりました。

2010年には、iPad向けにマルチメディア電子書籍として再刊行され、オーディオビジュアルノベル形式で楽しむことができるようにもなりました。ここには小松左京自らの新録ボイスメッセージも含まれています。

NHK人形劇版

NHKでは、日本の子供たちに向けた連続人形劇が制作されました。物語は原作のエピソードを基にしつつ、新たな書き下ろしも盛り込みながら展開されました。この制作が急がれた背景には、従来放送されていた『ひょっこりひょうたん島』が突然終了したことがあり、次の作品として『空中都市008』が早急に必要とされたためです。

人形劇は、原作の約30年後、21世紀の初頭を舞台に設定されています。視聴者からのアイデアを募り、それを元に物語を展開させる工夫もなされました。こうした視聴者参加型の試みは、物語に親しみを持たせ、人々の興味を引く要素となりました。

番組内では、空中都市だけでなく、海底都市や火星探査、月面基地のストーリーなど、多岐にわたる場所が舞台となりました。特にアポロ11号の月面着陸の年に放送が行われたため、リアルな宇宙探索の描写が見受けられます。1970年には特別番組『北極圏SOS』が放映され、大人気を博しましたが、わずか1年間で放送が終了してしまいました。

物語の登場人物

登場人物には、大原家の母親である冴子や、技術主任の父親雄介、冒険心旺盛な長男星夫、元気で勝気な妹月子などがいます。彼らは、アラームロボットや隣家のワイズマン一家などと共に、未来の都市生活を楽しみつつ様々な問題に立ち向かいます。

この作品は、子供たちにとって未知や冒険をイメージさせる素晴らしい物語であり、未来への希望と夢を描いた光り輝く作品として残っています。大人たちにとっても、当時の技術の進歩や未来社会への思い描きを再確認する機会となることでしょう。

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