空中風力発電機

空中風力発電機：風の力を高みから捉える革新技術

空中風力発電機（Airborne Wind Turbine, AWT）は、地上ではなく上空に設置された風力発電機です。地上付近に比べて上空では風速が著しく高くなるため、風力発電に最適な環境と言えます。風力発電の発電量は風速の3乗に比例するというベッツの法則からも、高高度での発電は高い効率性を期待できます。

しかし、従来の風力発電では、高所に発電機を設置するための巨大な鉄塔の建設が必要でした。この鉄塔の建設には莫大な費用と高度な技術が必要となるため、設置場所や経済的な制約から、多くの課題がありました。

そこで注目されているのが、係留型の飛行船やその他の空中プラットフォームを利用した空中風力発電です。この技術は、高い鉄塔を建設することなく、上空の強風を捉えて発電することを可能にします。飛行船を用いることで、強風の吹く高高度に発電機を設置し、従来の風力発電よりも効率的にエネルギーを生成できる可能性が拓けます。

空中風力発電のメリット

空中風力発電は、従来の地上設置型風力発電機に比べ、いくつかの利点があります。

高い発電効率: 上空の強風を利用することで、発電効率を大幅に向上させることができます。
設置場所の柔軟性: 高い鉄塔を必要としないため、山間部や島嶼部など、従来の風力発電では設置が困難であった場所にも設置できます。農村部や離島、鉱山、石油・ガス基地、軍事施設、洋上など、多様な場所での活用が期待されています。災害時の緊急対応や救援活動への活用も考えられます。
低騒音・低振動: 発電機が地上から離れて設置されるため、騒音や振動が地上に伝わりにくく、周辺環境への影響を低減できます。

技術的な課題と今後の展望

空中風力発電はまだ発展途上の技術であり、解決すべき課題も残されています。係留システムの信頼性向上や、飛行船などのプラットフォームの耐久性、メンテナンス性の向上などが重要な研究開発テーマです。また、気象条件や安全性に関する更なる研究も必要です。

しかし、その潜在的な可能性は高く、再生可能エネルギーの有効活用、特に電力供給が困難な地域への電力供給という点において、重要な役割を果たすと期待されています。

関連研究と開発事例

空中風力発電の研究開発は世界中で進められており、すでにいくつかの企業が実証実験を行っています。例えば、Altaeros Energies社は、係留式飛行船を用いた空中風力発電システムの開発に力を入れています。

日本の研究機関でも、空中風力発電に関する研究が活発に行われています。例えば、高空風力発電用の係留型加圧膜袋構造航空機に関する研究や、空中浮上型風車によるエネルギー取得の試みなどが報告されています。(参考文献参照)

関連用語

新エネルギー
再生可能エネルギー
風力原動機
集合型風力発電所
風レンズ
スマートグリッド

参考文献

草谷大郎, 藤井裕矩, 川崎天揮 ほか, 「高空風力発電用の繋留型加圧膜袋構造航空機の検討」『風力エネルギー利用シンポジウム』 37巻 2015年 p.407-410, doi:10.11333/jweasympo.37.0_407
* 新川和夫, 「空中浮上型風車によるエネルギー取得の試み」『風力エネルギー利用シンポジウム』 37巻 2015年 p.419-422, doi:10.11333/jweasympo.37.0_419

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