空家等対策の推進に関する特別措置法

空家等対策の推進に関する特別措置法について

空家等対策の推進に関する特別措置法（以下、空き家特措法）は、日本における空き家問題に対処するために制定された法律です。この法律は、適切な管理が行われていない空き家がもたらす様々な問題、例えば、倒壊の危険性、衛生上の問題、景観の悪化などに対処するために、市区町村が空き家の所有者を特定し、必要な措置を講じることを可能にしています。

法律の構成

空き家特措法は、以下の章で構成されています。

第1章：総則（第1条 - 第8条）
第2章：空家等の調査（第9条 - 第11条）
第3章：空家等の適切な管理に係る措置（第12条 - 第14条）
第4章：空家等の活用に係る措置（第15条 - 第21条）
第5章：特定空家等に対する措置（第22条）
第6章：空家等管理活用支援法人（第23条 - 第28条）
第7章：雑則（第29条）
第8章：罰則（第30条）
附則

基本指針と空家等対策計画

国土交通大臣と総務大臣は、空家等に関する施策の基本指針を策定します。市区町村は、この基本指針に基づいて、地域の実情に応じた空家等対策計画を定めることができます。

空家等の定義

空き家特措法において、「空家等」とは、以下のものを指します。

建築物またはそれに附属する工作物で、居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの
その敷地（立木その他の土地に定着するものを含む）

ただし、国または地方公共団体が所有・管理するものは除外されます。

市区町村による措置

市区町村長は、空家等に対して以下の措置を講じることができます。

情報収集: 空き家に関する情報収集、立ち入り調査（法令で規定された範囲内）
情報利用: 固定資産税情報など、空き家の所有者に関する情報を内部で利用
データベース: 空き家に関するデータベース整備（努力義務）
情報提供: 所有者への情報提供、助言、その他必要な援助（努力義務）
活用促進: 空き家とその跡地の活用に関する促進（努力義務）

注意点:

立ち入り調査を拒否、妨害、または忌避した場合、20万円以下の過料が科せられます。

特定空家等について

「特定空家等」とは、以下の状態にあると判断される空き家を指します。

倒壊等により著しく保安上危険な状態
著しく衛生上有害な状態
適切な管理が行われていないために著しく景観を損なっている状態
その他、周辺の生活環境を保全するために放置することが不適切である状態

特定空家等に対しては、市区町村長は以下の措置を取ることができます。

助言・指導: 所有者等に対して、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置を助言または指導
勧告: 助言・指導に従わない場合は、措置を勧告
命令: 勧告後も改善されない場合は、措置を命令
行政代執行: 命令に従わない場合、所有者の費用負担で行政代執行を実施

注意点:

市区町村長の命令に違反した場合、50万円以下の過料が科せられます。
所有者が特定できない場合は、公告後に略式代執行を行うことが可能です。

行政代執行について

行政代執行は、特定空家等の所有者が措置を履行しない場合や、履行しても不十分な場合に、市区町村が代わりに必要な措置を行う制度です。この際、費用は原則として所有者の負担となります。また、所有者が不明な場合は、公告後に略式代執行を行うことができます。

災害時における特例

空き家特措法による行政代執行は認定に時間がかかる場合があるため、緊急性の高いケースでは、災害対策基本法が適用されることがあります。実際に、夕張市では、大雪により損壊した空き店舗の解体に、災害対策基本法を適用し、市の支出で解体を行いました。

参考資料

旭合同法律事務所『空き家・空き地をめぐる法律実務』新日本法規出版、2016年
国土交通省：空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報

関連法規

空き家条例

この法律は、空き家問題の解決に向けて、市区町村がより積極的に取り組むことを可能にする重要な枠組みです。

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