空色勾玉

空色勾玉

『空色勾玉』（そらいろまがたま）は、1988年に荻原規子によって発表された日本のファンタジー小説です。本作は福武書店から出版され、同年に第22回日本児童文学者協会新人賞を受賞しました。日本の神話をモチーフとした物語は、白鳥異伝や薄紅天女と並んで「勾玉三部作」として広く知られています。

あらすじ

物語は、輝（かぐ）は大御神が支配する羽柴の里を舞台に展開されます。15歳の少女・狭也（さや）は、ある祭りの日に異国の楽人の一行と出会います。彼らは輝に敵対する闇の一族であり、狭也に空色の勾玉を手渡します。この勾玉は、彼女が出生時に握りしめていたもので、彼らは狭也が闇の巫女姫・狭由良（さゆら）であると告げます。

その後、狭也は憧れの存在である輝の大御神の子、月代王（つきしろのおおきみ）に見出され、采女として輝の宮に連れて行かれます。しかし、宮の生活は形式ばかりで自由がなく、狭也はその息苦しさに心を蝕まれていきます。唯一の心の拠り所であった月代王からも、「狭由良姫の生まれ変わり」として扱われていることを知り、彼女は次第に自分の存在意義に疑問を抱くようになります。

やがて、狭也は心の慰めだった鳥彦（とりひこ）が危機に陥ることを知り、彼を救うために「大蛇の剣」を盗もうと決意します。この行為は、彼女が幼い頃に見続けた悪夢と深く繋がっており、運命の大きな転機へと導くことになります。

主な登場人物

物語には魅力的なキャラクターが多数登場し、彼らの複雑な関係性が物語を深めています。

• - 狭也（さや）: 闇の一族に属するが、輝の村で育った15歳の少女。水の乙女の生まれ変わりであり、闇と光の狭間で苦悩する姿が描かれます。
• - 稚羽矢（ちはや）: 輝の一族の御子で、地上で孤立している少年。狭也との出会いを通じて、自らの運命に向き合うことになります。
• - 照日王（てるひのおおきみ）: 輝の一族の姫御子で、父神の信奉者。冷徹な性格が物語に緊張感をもたらします。
• - 月代王（つきしろのおおきみ）: 照日王の弟で、狭也に対して複雑な想いを抱くキャラクター。彼の存在が狭也の運命を左右します。
• - 鳥彦（とりひこ）: 陽気で自由な性格の少年。彼の存在が狭也の心の支えとなります。

作品の魅力

『空色勾玉』は、日本神話の要素を巧みに取り入れたストーリーであり、主人公の内面的な葛藤や成長が丁寧に描かれています。物語の中で繰り広げられる闇と光の戦いは、単なるファンタジーの枠を超えて、人生の意義や運命についての深い考察を誘います。また、キャラクターたちの人間関係や感情の描写がリアルで、読者は彼らに共感しやすいです。

この作品は、過去にはラジオドラマやミュージカルとしても展開されるなど、多くの人々に親しまれてきました。特に、ミュージカル版ではキャラクターたちの魅力が舞台上で表現され、曲やパフォーマンスを通じて新たな深みが加わっています。『空色勾玉』は、時代を超えて楽しめる幻想的かつ感動的な物語です。

既刊については、福武書店版をはじめ、さまざまな形で出版されており、その人気の高さが伺えます。

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