立本英機

1942年に広島県で生を受けた立本英機は、日本の衛生工学および環境学分野で顕著な業績を残した研究者です。2016年5月2日に逝去しました。彼の学術的な道のりは、1966年に千葉工業大学工学部工業化学科（現・生命環境科学科）を卒業したことから始まります。

衛生工学は公衆衛生の維持向上を、環境学は持続可能な社会の実現を目指す学際的な分野です。立本氏の研究は、特に「水」の問題に深く関わり、健康と環境保全に貢献しました。工業化学科での学びを経て、これらの分野へ進展したことは、化学の知見を社会課題解決に応用する姿勢を示しています。

大学卒業後、彼はアメリカ合衆国のレンセラー工科大学で研究員として研鑽を積みました。この海外経験は、彼の視野を広げ、その後の研究に影響を与えたでしょう。

日本帰国後、立本氏は研究者としての道を深めます。特に、活性炭を用いた吸着法による水処理技術に関する研究は、彼の博士論文の主題となり、1977年に京都大学から工学博士号（論文題：「活性炭収着法による水処理に関する研究」）を授与される基礎となりました。これは、環境問題の重要性が増す中で、実用的かつ効果的な汚染物質除去技術の開発に貢献するものでした。

1991年からは千葉大学の教授として、教育と研究の第一線で活躍しました。多くの学生を指導し、専門分野の知見を伝え、研究室を主宰し、学術界への貢献を続けました。その功績が認められ、2010年には千葉大学名誉教授の称号を授与されました。これは、大学での長年の貢献と学術界における確立された地位を示すものです。

彼の研究成果や専門知識は、専門家だけでなく一般向けの著作としても広く知られるようになりました。日刊工業新聞社からは、「炭」や「環境」に関する啓蒙書を複数出版しています。

主な著書：
『おもしろい活性炭のはなし』（1997年、日刊工業新聞社）
『おもしろい炭のはなし』（2000年、日刊工業新聞社）
『トコトンやさしい炭の本』（2002年、日刊工業新聞社）
『環境をはかる-地球の未来への思い-』（2003年、日刊工業新聞社）

これらの著作は、一般市民にも環境問題や炭に関する知識を広める上で重要な役割を果たしました。科学技術を分かりやすく伝える手腕は、多くの読者にとって、身近な「炭」や、グローバルな「環境」について学ぶ入り口となりました。水処理における活性炭研究の視点から語られる炭の話は、学術的裏付けと実践的応用例が結びつき、興味深い内容となっています。

立本英機氏は、衛生工学、環境学の研究者・教育者として社会に貢献しました。水の清浄化技術、科学知識の普及に寄与し、2016年にその生涯を終えましたが、彼の業績は今なお多くの人々に記憶されています。

もう一度検索