立法院 (満洲国)

満洲国における幻の立法機関：立法院

立法院は、満洲国において立法機関として構想されたものの、一度も正式に開設されることのなかった機関です。一院制を採用し、組織法では日本の帝国議会に類似した権限が付与されていました。しかし、実際には議員選挙は行われず、議会としての役割を果たすことはありませんでした。

立法院の概要

立法院は、組織法において以下のような権限を持つと定められていました。

立法翼賛権: 法案を審議し、可決する権限（第5条、第18条）。
予算翼賛権: 予算案を審議し、可決する権限（第18条）。
国務院への建議権: 国務院に対して政策提言を行う権限（第19条）。
人民請願受理: 国民からの請願を受け付ける権限（第20条）。
召集と会期: 毎年1回、皇帝によって召集され、常会は1ヶ月間。必要に応じて会期延長が可能（第20条）。
定足数: 会議成立に必要な議員数は、総議員の3分の1（第22条）。
議決: 議事は過半数の賛成で決定し、可否同数の場合は議長が決定（第23条）。
会議の公開: 会議は公開が原則だが、国務院の要求や立法院の決議で秘密会も可能（第24条）。
皇帝の裁可: 立法・予算が可決された場合、皇帝の裁可を経て公布・施行（第25条）。
再議: 立法・予算が否決された場合、理由を明示して再議に付し、再度否決された場合は参議府に諮って可否を決定（第25条）。
議員の不逮捕特権: 立法院議員は、院内での議論や評決に関して院外での責任を問われない（第26条）。
国務大臣の出席: 国務総理大臣や各部大臣は立法院会議に出席して発言できるが、評決には参加できない（第30条）。
* 非常時の勅令: 非常時に皇帝が立法院を召集できない場合、参議府に諮って法律と同等の勅令を発布でき、次の会期で立法院に報告する（第8条）。

このように、組織法上は日本の帝国議会とほぼ同様の権限を持つ議会として構想されていました。しかし、「立法院の組織は別に法律で定める」とされ（第17条）、具体的な組織に関する規定は先送りされました。

立法院の準備と機能停止

立法院の開設準備として、まず「秘書庁」が設置され、院長に趙欣伯、秘書長に劉恩格が任命されました。しかし、1934年10月には立法院は機能を停止し、準備機関に格下げされます。秘書庁のみが残され、院長の趙欣伯は辞任、秘書長の劉恩格がその役割を引き継ぎました。

満洲国憲法の制定論議も下火になったため、立法院は最後まで議会として機能することはありませんでした。そのため、組織法第41条に基づき、立法代行機関として参議府がその役割を担うことになりました。また、民意を汲み取る機関としては、協和会がその役割を期待されました。

結論

立法院は、満洲国における立法機関として構想されながらも、その実態は準備段階で頓挫し、幻の議会となってしまいました。組織法は存在したものの、具体的な運用には至らず、立法機能は参議府によって代行されることになりました。このことは、満洲国における政治体制の脆弱性を示す一例と言えるでしょう。

もう一度検索