竜骨 (船)

竜骨：船舶を支える要

竜骨は、船舶の船底中央を縦方向に貫く主要な構造部材です。船首から船尾まで伸びるこの強固な骨格は、船体の強度を維持し、航行時の安定性を確保する上で不可欠な役割を果たしています。古くから様々な船舶に使用され、その形状や機能は時代や船の種類によって進化を遂げてきました。

歴史と名称の由来

竜骨という名称は、中国の唐船の船底構造材を指す言葉に由来します。唐船の建造では、まず竜骨を船体の基盤として据え、それに直角に肋材を組み付けることから船作りが始まりました。この太く長く伸びる竜骨の姿が、竜の背骨を連想させたことから、この名が付けられたと言われています。

日本の伝統的な和船においても、船底を縦に貫く主要部材は「竜骨」と呼ばれ、同様に重要な役割を担っていました。和船では、この部材を「間切航（まぎりがわら）」とも呼んでいました。

一方、西洋の造船技術が日本に伝わった江戸時代後期には、英語のkeelを訳す際に、唐船の竜骨の名称がそのまま採用されました。

洋式船舶におけるキール

帆船において、キールは船底に突き出した部分として重要な役割を果たしていました。バラストの役割に加え、風圧による横滑りを防ぐため、水圧を利用していました。しかし、汽船の登場とともに、この突起部は抵抗となるため、不要なものとなりました。

現代の鋼船やFRP船では、外板のみで船底を構成するものもあり、本来のキールの意味とは異なるものの、「平板竜骨（Flat keel）」と呼ばれることもあります。

ヨットにおけるキール

ヨットにおけるキールは、単なる構造材としての役割にとどまりません。翼のような形状を持ち、水中を航行する際に抗力を発生させ、船体の横滑りを抑制する役割があります。また、キール内に錘を入れることで、復原力、つまり船体を水平に戻す力を生み出します。錘の重量を増やすことで、復原力を高めることができます。

ヨットのキールには様々な種類があり、形状によって特徴が異なります。

ロングキール: 前後が長く、直進性に優れますが、旋回性能は劣ります。しばしば舵と一体化されています。
フィンキール: 前後が短く上下に長く、旋回性能に優れますが、直進性はやや劣ります。舵とは独立しており、喫水も深くなります。競技用ヨットに多く採用されています。
ツインキール: キールが2つあるタイプで、喫水浅く、干潮時や浜への乗り上げ時にも安定性を保ちます。

近年の高度なキール技術

近年、ヨットレースにおいては、キールの形状が勝敗を大きく左右する重要な要素となっています。高度な技術を用いたキールは、船の性能を向上させる上で不可欠な存在です。

カンティングキール: キールを風上側に傾けることで、強い風に対しても傾きを小さく抑えることができます。
* 水中翼（ハイドロフォイル）: キールと水中翼を組み合わせることで、船体を水上に浮かせることができ、高速航行を可能にします。アメリカスカップのような高速レースでは、双胴船にL字型の水中翼（ダガーボード）を設置し、船体を完全に浮上させる技術も用いられています。

しかし、これらの高度な技術は、海上の異物に接触することで損傷を受けやすく、長距離レースではリタイアにつながるリスクも伴います。

アメリカスカップでは、近年、AC75と呼ばれる単胴船に左右と船尾に合計3つの水中翼を設置し、船体を完全に浮上させる技術が採用されており、最高速度は時速80キロを超えています。キールは浮上中は安定性を保つ機能を完全に失うまでに至っています。

各チームは独自のキール設計を行い、その形状は極秘事項として厳重に管理されています。

このように、竜骨は古くから船舶建造において重要な役割を担ってきただけでなく、現代においてもその技術革新は続いており、常に進化を続けている技術なのです。

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