竪穴式住居

竪穴建物：古代の知恵と工夫が息づく住まい

竪穴建物は、地面を掘り下げて床面とした住居のことで、竪穴住居、竪穴建物とも呼ばれます。地面に穴を掘り、その中に柱を立てて屋根をかけたもので、太古の昔から世界各地で見られた建築様式です。本記事では、竪穴建物の構造、歴史、そしてその魅力に迫ります。

竪穴建物の構造

竪穴建物は、大きく分けて「竪穴部」「地表部」「上屋部」の3つの部分から構成されています。

竪穴部：地面を掘り下げた半地下の部分。深さは通常70～80cm程度ですが、深いものでは2mを超えるものも存在します。
地表部：竪穴の周囲の地表面部分。竪穴部を補強したり、雨水の浸入を防ぐ役割を果たします。
上屋部：屋根や柱など、地表より上の構造物。伏屋式と壁立式の2種類があります。
伏屋式：屋根が直接地面に接する構造。屋根材には、茅や葦、土などが用いられました。
壁立式：屋根と地面の間に壁がある構造。縄文時代の大型竪穴建物に見られます。

竪穴建物の歴史

竪穴建物は、世界各地で古くから利用されてきました。中国の仰韶文化の遺跡や、アメリカ南西部のモゴヨン文化、ホホカム文化の遺跡からも発見されています。日本列島でも、旧石器時代から縄文時代、弥生時代、古墳時代にかけて広く作られました。

日本列島における竪穴建物の変遷

縄文時代：円形や楕円形のものが多く、内部には炉が設けられました。中期には大型の建物が現れ、後期には柄鏡形竪穴建物と呼ばれる独特の形状の建物も登場しました。
弥生時代：初期には東西で異なる形式が見られましたが、後期には隅丸方形の建物が主流となりました。
古墳時代：カマドが導入され、竪穴建物の構造に変化が見られました。カマドは煮炊きを行うための施設で、竪穴壁に作り付けられました。
飛鳥・奈良・平安時代：西日本では7世紀、東日本では平安時代まで存続し、次第に掘立柱建物へと移行していきました。

竪穴建物の種類

竪穴建物には、様々な種類があります。

柄鏡形竪穴建物：出入り口部分が外側に張り出した、柄鏡のような形状の建物。
敷石建物：床面に川原石を敷き詰めた建物。
花弁形竪穴建物：竪穴の一部を壁状に掘り残し、間仕切り空間を設けた建物。

竪穴建物の内部施設

竪穴建物の内部には、生活に必要な様々な施設が設けられました。

炉：煮炊きや暖房、照明などに使用されました。地床炉、石囲炉、土器埋設炉など、様々な種類があります。
カマド：煮炊きに使用される施設で、古墳時代に朝鮮半島から伝わりました。
貯蔵穴：食料などを貯蔵するための穴。
梯子穴・階段：竪穴への出入りに使用する梯子や階段を設置するための穴。

竪穴建物の現代的意義

竪穴建物は、自然と調和した持続可能な住まいとして、現代においても注目されています。そのシンプルな構造と、自然素材を活用した建築方法は、環境負荷の少ない住まいづくりのヒントを与えてくれます。また、竪穴建物の歴史を学ぶことは、私たちの祖先の知恵と工夫を知り、未来の住まいを考える上で貴重な示唆を与えてくれるでしょう。

参考文献

苫小牧市『苫小牧市史』苫小牧市〈上巻〉, 1975年
文化庁文化財部記念物課『発掘調査のてびき』同成社〈集落遺跡調査編第2版〉, 2013年

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