竹中昭

竹中 昭（たけなか あきら）氏は、1951年10月23日に鳥取県で生を受けた、日本の元プロ野球選手です。ポジションは投手でした。そのプロ野球選手としてのキャリアは比較的短いものでしたが、特にアマチュア時代には地元山陰地方で将来を期待される存在として名を馳せました。

竹中氏が野球の才能を磨いたのは、鳥取県立由良育英高等学校でした。この高校時代、彼はチームのエース格として活躍しました。そして、彼の由良育英高校でのチームメイトには、一年下の学年に小林繁氏がいました。後に読売ジャイアンツのエースとして名を馳せることになる小林氏と共に、竹中氏は当時、山陰地方において非常に注目される高校球児でした。二人の投手は、その才能や将来性から、地域の野球ファンの間で大いに話題となり、「山陰に由良育英の二枚看板あり」とでも言うべき存在として、プロ野球関係者からも視線を集めていたと伝えられています。特に竹中氏は上級生としてチームを引っ張り、その投球術は高く評価されていました。

高校での活躍が実を結び、竹中氏にはプロの世界への道が開かれました。1969年に開催されたプロ野球ドラフト会議において、彼は広島東洋カープから9位という順位で指名を受けました。当時のドラフト会議は現在とは形式が異なりますが、9位での指名というのは決して早い順位ではありません。しかし、それはプロのスカウトが竹中氏の投手としての素質を見抜き、将来的な可能性に期待をかけた証でもありました。こうして竹中氏は、地元から遠く離れた広島の地に本拠地を置く広島東洋カープに入団し、プロ野球選手としての第一歩を踏み出しました。

広島東洋カープに入団した竹中氏は、プロの環境でその投球技術に磨きをかけようと努めました。彼の投手としての特徴の一つは、その変化球、特にカーブでした。伝えられるところによると、彼のカーブは非常にブレーキが効いており、打者の手元で鋭く曲がる質の高いボールだったようです。プロの世界で通用する可能性を感じさせる球種を持っていたと言えます。しかし、プロ野球の世界は技術だけではなく、精神的な強さや競争意識も重要になります。竹中氏は、性格的には非常に大人しいと評されていました。この性格が、プロの激しい競争環境の中で、自身の能力を最大限に発揮し、チーム内での地位を確立していく上で、何らかの影響を与えた可能性も指摘されています。

残念ながら、竹中氏は広島東洋カープに在籍した期間中、一度も一軍の公式戦のマウンドに立つ機会を得ることはできませんでした。二軍（当時の名称）での調整や練習の日々が続き、一軍の厚い壁を破ることは叶いませんでした。プロ野球の世界では、毎年多くの選手が入団してきますが、一軍で活躍できるのはごく一握りであり、その中で定位置を確保し、長くプレーを続けられる選手はさらに限られます。竹中氏もまた、この厳然たるプロの世界の現実と向き合った選手の一人でした。

背番号に関しては、入団1年目の1970年から1972年までの3シーズンは「42」を着用しました。プロ4年目となる1973年には、背番号が「48」に変更されました。背番号の変更は、球団の方針や選手への期待度、あるいはチーム編成上の理由など様々ですが、竹中氏の場合はこの「48」を背負ったシーズンを最後に、プロ野球選手としてのキャリアを終え、広島東洋カープを退団することとなりました。短いプロ生活ではありましたが、厳しいプロの世界に身を置き、そこで経験したことは、彼のその後の人生において貴重な糧となったことでしょう。

竹中昭氏のプロ野球選手としての歩みは、派手な記録や数字で彩られたものではありませんでした。一軍公式戦出場ゼロという結果だけを見れば、プロとして成功したとは言えないかもしれません。しかし、鳥取の高校からドラフト指名を受けてプロ入りを果たし、厳しいトレーニングに耐え、一軍昇格を目指して日々努力した事実そのものが、彼の野球に対する情熱や真摯な姿勢を物語っています。特に、由良育英高校で小林繁氏と共に注目を浴びた時代のエピソードは、彼の野球人生における重要なハイライトと言えるでしょう。彼の名前は、広島東洋カープの選手一覧に刻まれており、プロ野球の歴史の一コマを確かに彩った人物として記憶されています。彼のキャリアは、プロ野球の世界における光と影、そして一軍の舞台に立つことの難しさを改めて感じさせるものと言えます。プロ野球の世界に挑んだ一人の球児の夢と現実、それが竹中昭氏の歩みでした。

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