第一生命多額詐取事件

第一生命多額詐取事件

第一生命多額詐取事件は、第一生命保険の営業社員が、顧客を信用させて架空の金融取引をもちかけ、多額の資金を不正に詐取した事件です。この事件は、長年にわたりトップセールスを記録していた営業社員が、「上席特別参与」や「特別調査役」といった肩書を利用し、顧客からの信頼を得ていたことが背景にあります。

事件の概要

事件の中心人物である営業社員は、顧客に対し「金利30％の特別枠」など、実際には存在しない金融商品を勧誘しました。これにより、21名の顧客から約19億円もの資金を不正に集めました。集められた資金は、社員自身が流用し、顧客への返済は滞っていました。

事件が表面化したのは、2014年10月に講談社から発刊された浜崎裕治氏の著書『実録 頭取交替』がきっかけでした。この書籍では、仮名ではあるものの、当該社員と山口銀行相談役との長年にわたる癒着関係が暴露され、大手メディアもこの問題に注目し始めました。

2020年6月、被害者からの訴えにより、第一生命は内部調査を開始し、不正行為を明らかにしました。同年7月には、第一生命は山口県警に刑事告発を行い、当該社員を懲戒解雇処分としました。さらに、金融庁も報告徴収命令を出すなど、事態の重大さから調査に乗り出しました。

2021年5月、山口県警は元社員を詐欺容疑で書類送検しましたが、元社員の高齢などを考慮し、不起訴処分となりました。
2023年11月に元社員が死去。翌年に公表されました。

被害者の救済

事件発覚後、第一生命は被害者への救済措置を講じました。まず、告発のきっかけとなった被害者に対して、預けた保険金の約3割を立替弁済しました。

さらに、被害者を支援する弁護団は、被害額の全額弁済を求めて裁判所に調停を申し立てました。これに対し、第一生命は裁判所から示された和解案を上乗せする形で、全被害者に対して被害額の全額を弁済することを決定しました。また、今後元社員に対して支払金の弁済を求めていく方針も明らかにしました。

事件の教訓

第一生命多額詐取事件は、金融機関における内部統制の重要性を示す事例となりました。また、高金利などの甘い言葉には注意し、安易に投資をしないことの重要性も改めて認識されました。高齢者を狙った詐欺事件は後を絶たず、注意が必要です。

関連情報

浜崎裕治『実録 頭取交替』講談社、2014年
浜崎裕治『実録 頭取交替』講談社+α文庫、2017年
* 生保の女帝 19億円を不正詐取した第一生命の89歳・元営業職員は、山口銀行の“女帝”だった

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