第三世代の人権

第三世代の人権

第三世代の人権とは、第一世代、第二世代の人権を実現する上で不可欠な、第二次世界大戦後の非植民地化の流れの中で発展途上国を中心に提唱されるようになった人権の総称です。これは、従来の古典的な人権観とは異なる側面を持ちます。

第一世代、第二世代の人権

第一世代の人権: 生命・身体の自由、思想・良心の自由、表現の自由、集会・結社の自由、公正な裁判を受ける権利、財産権、参政権など、自由権的側面が強い人権です。
第二世代の人権: 教育を受ける権利、労働の権利、社会保障を受ける権利、生活水準を維持する権利、健康を享受する権利、科学・文化に関する権利など、社会権的側面が強い人権です。

第三世代の人権の歴史的沿革

第二次世界大戦後、人権は国際的な関心事となり、1960年の「植民地独立付与宣言」を機に非植民地化が進展。国際社会の構造変化の中で、発展途上国が人権を享受するためには、国内および国際社会の構造改革が必要であるという考え方が生まれました。1971年、UNESCOのカレル・バサックが「第三世代の人権」を提唱し、発展途上国を中心に国際社会で議論されるようになりました。

基本的特徴

カレル・バサックによれば、第三世代の人権は、発展、平和、環境、情報伝達、人類の共同財産に関する権利の総称であり、その実現には個人、国家、公的・私的団体、国際共同体の連携が不可欠です。国際法学者の間では、以下の3つの特徴が指摘されています。

1. 連帯の権利であること: 地球規模での協力を必要とする集団的権利でありながら、個人的側面も有します。
2. 全社会勢力の努力を求めること
3. カテゴリーに含まれる権利に諸説あること

具体的内容

第三世代の人権に含まれる権利には統一的な見解はありませんが、主に以下が挙げられます。

自決権: 国際人権規約第一条に見られるように、国際法上比較的確立された権利です。
発展の権利: 1986年に国連総会で「発展の権利に関する宣言」が採択され、権利主体として個人・集団、義務主体として主権国家・国際機関・国際共同体が想定されています。権利実現には、社会活動におけるすべての行為主体の参加が求められます。
平和追求権: 軍縮問題との関連で主張され、1984年に「人民の平和への権利に関する宣言」、2016年には「平和への権利宣言」が国連総会で採択されています。ただし、法的権利として認められていない国も存在します。
環境権と持続可能性への権利: 環境権は、国際的にもっとも承認を受けている権利の一つです。各国の憲法や国際的な宣言に明記されています。
情報環境権:安心して情報環境に触れて、それを利用、享受する権利です。
人類の共同財産より利益を受ける権利: 1982年の国連海洋法条約で深海底資源において認められましたが、発展途上国のための権利という性格が強く、普遍的な人権とは言えません。
通信への権利
人道的援助を求める権利

批判論

第三世代の人権に対する否定説も多く存在します。主な問題点としては、人権のインフレ化、集団の権利による個人の権利侵害、義務主体の不明確さなどが挙げられます。

人権のインフレ化が惹起される
集団の権利（第三世代）によって個人の権利（第一世代）が侵害される
国家が人権共有主体になると、国家の人権によって個人の人権が害される
「世代」という語から、第三世代より前の人権の価値が相対的に低下する
権利として対抗、要求する相手である義務主体が明確でない
権利主体に集団を含めると義務主体が同一になってしまう

擁護論

肯定説からは、義務主体の不明確さは以前の人権にも見られた、人権はあらゆる権力に対抗しうる、権利行使には集団的側面が不可避、第三世代の人権にも個人的側面が存在する、などの反論がなされています。また、第一世代から第三世代までの人権は補完的であり、相互に依存していると主張されています。

まとめ

第三世代の人権は、発展途上国の視点から生まれた新しい人権の概念であり、その法的性質や具体的内容については議論が続いています。しかし、国際社会における人権の議論を深め、新たな視点を提供していることは確かです。

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