第四艦隊事件

第四艦隊事件

第四艦隊事件（だいよんかんたいじけん）は、1935年（昭和10年）に岩手県沖で発生した日本海軍の艦艇による大規模な海難事故です。この事件では、台風による強風と高波の中で艦隊演習が行われ、艦艇の設計や船体の強度に関する重大な問題が明らかになりました。このことは、その後の日本海軍艦艇の設計方針に大きな影響を与えることとなります。

事件の経過

海難前の準備

前年の1934年に発生した友鶴事件を受けて、日本海軍は艦艇の復原性を向上させるための工事を行っていました。しかし国際情勢の悪化や軍縮条約の失効に伴い、海軍はさらなる増強を目指していました。1935年、第四艦隊は昭和10年度の海軍大演習を実施するために臨時に編成され、9月24日から25日にかけて函館港を出港しました。この艦隊は、主力部隊、補給部隊、水雷艦隊など多岐にわたる艦艇で構成され、演習地へと向かいました。

台風との遭遇

演習開始直後、台風が接近していることが報告されていましたが、艦隊指揮官たちは反転して回避する案を検討したものの、悪化する海況によって艦艇同士の衝突の危険が高まることから、計画通りの航行を続行することが決定されました。主力部隊は台風の中心に入ることとなり、観測された最低気圧は960mbar、最大風速は34.5m/sにも達しました。特に水雷戦隊は、台風の危険な右半円に入り、最大瞬間風速は45−50m/sに達しました。

被害の発生

この混乱の中、41隻の艦艇のうち約半数が損傷を受けました。最新鋭の吹雪型駆逐艦「初雪」と「夕霧」は特に甚大な被害を受け、艦首部分が破断しました。さらに、艦首部分には機密書類が保管されていたため、状況は非常に緊迫していました。生存の見込みがない乗員24名の確認も取れず、最終的に艦砲射撃によって沈められる決断が下されました。

被害の詳細

艦隊の損害はひどく、駆逐艦「初雪」や「夕霧」は艦橋側で艦体が切断、他の艦も多くが大破しました。航空母艦「鳳翔」と「龍驤」もそれぞれ飛行甲板が損傷し、重巡洋艦「妙高」は船体中央部の鋲が緩んでいました。こうした事態を受けて、海軍は艦艇の設計を見直す必要があると認識しました。

事故の原因と教訓

10月1日に設立された査問委員会による調査では、損傷の主な原因として新鋭艦の溶接部の強度不足が指摘されました。一方で、当時の設計基準が台風の強風や高波に対する耐久性を過小評価していたことも問題視されました。特に、波高/波長の比が1/10に達するような過酷な海況下では、既存の設計が耐えられなかったことが実証されました。

事件を受けて、日本海軍は全艦艇のチェックを実施し、船体の強度を確保するための補強工事を行うこととなりました。また、軽量化策として一部の武装の撤去が進められました。この事件は、今後の艦艇設計における重要な教訓を提供することになり、リベット中心の建造法へと再び戻る契機ともなりました。

さらに、気象学的には広範囲にわたる艦からの観測データが集まり、台風の構造を理解する上で貴重な資料が得られました。この情報は後に公開され、海洋研究に貢献することとなります。

第四艦隊事件は、艦艇の設計や気象観測の重要性を再認識させる歴史的な出来事であり、日本海軍の未来に大きな影響を与えることとなりました。

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