第13回都市対抗野球大会

第13回都市対抗野球大会 1939年夏 後楽園球場

1939年夏、日本のプロ野球発足から数年、そして第二次世界大戦への足音が迫る時代に、アマチュア野球の最高峰である第13回都市対抗野球大会が後楽園球場を舞台に開催されました。7月30日から8月7日までの期間、熱戦が繰り広げられました。この大会は、時代の波を映し、いくつかの特徴的な様相を見せました。

大会の背景と参加チームの状況

前回大会には16チームが参加しましたが、今大会は14チームでの開催となりました。参加チーム数が減少した背景には、大陸での戦火拡大という厳しい現実がありました。前年出場していた満洲からの2代表、大連市の満洲倶楽部と奉天市の満鉄倶楽部が、戦況の悪化により出場を辞退せざるを得なかったためです。これにより、国内チームのみで優勝が争われることとなりました。

また、当時のアマチュア野球界は、企業が支援するチームが台頭し、地域に根差したクラブチームが衰退の一途をたどっていました。今大会の参加チーム構成はその傾向を顕著に示しており、出場14チームのうち11チームが企業チームでした。これは、選手の身分や練習環境が安定している企業チームが、戦力面で優位に立っていた状況を物語っています。

激しいトーナメントと決勝戦

大会は、予選を勝ち抜いた14チームによるトーナメント方式で行われました。全国各地の代表チームが、黒獅子旗を目指して後楽園球場で白熱した試合を展開しました。順当に勝ち上がったのは、前年大会を制した東京代表の藤倉電線です。彼らはその実力を遺憾なく発揮し、再び決勝の舞台へと進出しました。

決勝戦は、大会最終日の8月7日に行われました。前年覇者である藤倉電線と、大阪代表の庄内田村駒が対戦しました。試合は緊迫した展開となりましたが、藤倉電線が勝利を掴み取りました。

藤倉電線の歴史的連覇と吉田正男投手の活躍

この第13回大会で栄光を掴んだのは、東京代表の藤倉電線でした。彼らは見事に前年に続く優勝を果たし、大会史上初の2年連続優勝、そしてチームとして通算2回目の黒獅子旗獲得という偉業を達成しました。この歴史的な快挙の最大の立役者として、チームを牽引したのは、エースの吉田正男投手です。

明治大学野球部出身の吉田投手は、今大会で目覚ましい活躍を見せました。彼はなんと、決勝戦を含む4試合に連続で先発登板し、チームの全ての勝利に貢献しました。その鉄腕ぶりだけでなく、彼は打撃面でも重要な役割を果たしました。打順に入った際には、適時打を放つなど、投打にわたってチームを勝利へと導いたのです。吉田投手の孤軍奮闘とも言える活躍が、藤倉電線の連覇を支えました。

新設された殊勲賞と栄誉

今大会は、選手の活躍を称える新たな試みが導入された大会でもありました。大会で最も活躍した選手に贈られる伝統の橋戸賞に加え、第13回大会から新たに殊勲賞が設けられたのです。

この年の橋戸賞には、藤倉電線の吉田正男投手が選ばれました。その圧倒的な投球、4連投という献身性、そして打撃での貢献が高く評価された結果と言えるでしょう。

新設された殊勲賞には、2名の選手が選ばれました。一人目は八幡製鉄の森谷一塁手、そして二人目は決勝で好投を見せた庄内田村駒の河内投手です。この殊勲賞の設置は、橋戸賞とは異なる視点で大会に貢献した選手たちに光を当てるものであり、以降の大会でも継続されることになりました。

第13回都市対抗野球大会は、戦時色が濃くなる社会情勢の中で行われましたが、選手たちの真摯なプレーと、藤倉電線、そしてエース吉田正男投手の歴史に残る活躍によって、都市対抗野球の歴史に確かな一ページを刻みました。

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