第15回全国中等学校優勝野球大会

第15回全国中等学校優勝野球大会

昭和4年、1929年の夏、高校野球の聖地である兵庫県武庫郡鳴尾村（現在の西宮市）の甲子園球場では、第15回全国中等学校優勝野球大会が開催されました。8月13日に幕を開けたこの大会は、8月20日まで熱戦が繰り広げられ、全国から集まった代表校が優勝旗を目指して戦いました。

大会の画期的な出来事

この第15回大会は、後の全国高等学校野球選手権大会の歴史において特筆すべきいくつかの「初めて」がありました。

最も象徴的な出来事の一つは、選手宣誓が初めて導入されたことです。開会式において、未来の球児たちがスポーツマンシップにのっとり正々堂々と戦うことを誓うこのセレモニーは、この大会から始まりました。栄えある第1回の選手宣誓を務めたのは、慶応商工（現在の慶應義塾高等学校の前身の一つ）の主将、黒崎数馬氏でした。当時の記録によると、大会委員長による訓示が行われた後、黒崎主将は紙に書かれた宣誓文を読み上げ、「訓示の通り正々堂々と戦います」と力強く宣誓したと伝えられています。

また、この大会に合わせて、甲子園球場にはアルプススタンドが新設されました。これにより、より多くの観客が試合を観戦できるようになり、球場の一体感や応援の熱気が増すこととなりました。今日の甲子園の象徴ともいえるアルプススタンドは、この第15回大会を機に誕生したのです。

熱戦の軌跡

全国の予選を勝ち抜いた代表校が甲子園に集結し、一球一打に魂を込めた戦いを展開しました。

1回戦では、鳥取一中が秋田師範を12対0と圧倒的な力で下した試合や、市岡中が青島中を11対0で退けるなど、力の差が明確に出た試合がありました。また、台北一中が前橋商を10対1で破るなど、遠来の代表校もその実力を示しました。

2回戦では、鳥取一中が敦賀商に対し、2対1と僅差での劇的なサヨナラ勝ち（2x-1）を収めるなど、手に汗握る展開の試合が増えました。高松商と諏訪蚕糸の一戦は、延長11回にもつれ込む死闘となり、高松商が1対0で辛くも勝利を収めました。

準々決勝も好試合が続きました。広島商が静岡中を延長11回の末に4対2で破り、鳥取一中が市岡中を1対0の投手戦で制しました。海草中は高松商を6対3で、台北一中は平安中を5対4で破り、それぞれ準決勝進出を決めました。

準決勝では、広島商が鳥取一中を5対1で下し決勝へ。もう一試合の海草中対台北一中は、8回表途中、海草中が9対0と大量リードしたところで降雨によるコールドゲームとなり、海草中が決勝進出を果たしました。

これらの熱戦を通じて、選手たちは白球を追いかけ、記憶に残るプレーを随所に披露しました。

大会を彩った本塁打

この大会でも、数々のアーチが甲子園の空に描かれました。記録に残る本塁打は以下の通りです。

第1号：竹谷 勝義（鳥取一中）- 1回戦
第2号：千谷 七郎（鳥取一中）- 1回戦
第3号：勝部 尚文（市岡中）- 1回戦
第4号：岡本 矩雄（市岡中）- 1回戦
第5号：石田 政良（鹿児島商）- 1回戦
第6号：蜂須賀 泰造（台北一中）- 2回戦

特に1回戦で多くの本塁打が飛び出し、打線の力強さを見せつけました。

第15回全国中等学校優勝野球大会は、初の選手宣誓やアルプススタンド新設といった、現在の高校野球に繋がる重要な変革があった歴史的な大会として、その名を刻んでいます。

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