第16回都市対抗野球大会

第16回都市対抗野球大会 概要

1942年（昭和17年）の夏、8月1日から8月7日までの1週間にわたり、東京の後楽園球場を舞台に第16回都市対抗野球大会が開催されました。前年は、戦局の拡大に伴う集会禁止令などの影響で、開幕直前でのやむを得ない中止に追い込まれていただけに、2年ぶりの大会開催となりました。

開催の背景と意義

前年の中止から一転、この年に大会が実現した背景には、当時の太平洋戦争における戦況が日本にとって比較的有利に進んでいると判断されたことがありました。政府当局は、銃後（後方で銃を支える国民）の戦意高揚と士気向上を目的として、都市対抗野球大会の開催を許可したとされています。これにより、プロ野球を含む他のスポーツイベントが縮小傾向にある中でも、都市対抗野球は戦時下の重要な国民的行事として位置づけられました。

参加チーム

全国各地から選抜された合計16チームが参加し、トーナメント方式で優勝が争われました。この第16回大会では、東京鉄道局、横浜蚕糸倶楽部、大同製鋼、日鉄広畑の4チームが都市対抗野球に初めて出場しました。戦時下にもかかわらず、新たな顔ぶれが加わったことは、当時の野球熱を示すものと言えます。

大会の経過と結果

トーナメントは激しい戦いが繰り広げられました。そして、この戦時下に行われた大会を制し、栄えある黒獅子旗を手にしたのは、朝鮮半島から参加した全京城チームでした。全京城は、第14回大会（1940年）以来、2年ぶり2回目の優勝を果たしました。ただし、大会が連続して開催されていないため、公式記録上は連続優勝とはなっていません。黒獅子旗は、再び海を渡り、京城へと持ち帰られました。その後の黒獅子旗のたどった数奇な運命は、激動の時代を象徴するエピソードとして語り継がれています。

決勝戦は8月7日に行われました。試合の詳細な内容は記録に乏しい部分もありますが、全京城の山中投手が勝利投手となり、対戦相手（資料にはチーム名の記載なし）の鈴木投手が敗戦投手となりました。全京城はこの勝利で大会の頂点に立ちました。

表彰選手

本大会の表彰において特筆すべき点があります。都市対抗野球大会の最高殊勲選手に贈られる「橋戸賞」について、第16回大会は該当者なしとなりました。これは大会の長い歴史の中で、唯一橋戸賞の受賞者がいなかった異例の大会として記録されています。個人の突出した活躍よりも、チーム全体の力や、戦時下の特殊な状況などが影響したのかもしれません。

殊勲賞としては、大同製鋼の芝田捕手と加治屋投手、そして優勝した全京城から八島投手と平山遊撃手が選ばれています。

大会以降の影響

第16回大会の終了後、太平洋戦争の戦況は一層厳しさを増し、国内のあらゆる活動に大きな影響を及ぼすことになります。野球界も例外ではなく、学生野球、プロ野球ともに活動の縮小や中断が相次ぎました。都市対抗野球大会も、この第16回大会を最後に3年間の開催中断期間に入ります。戦局の悪化により、選手たちの多くが戦地に送られたことなども影響しました。結果として、満洲、朝鮮、台湾といった当時の日本国外にあった地域から参加していたチームにとって、この第16回大会が最後の都市対抗野球への出場機会となりました。戦時下の特殊な状況で開催され、そして中断へと向かう過渡期に位置づけられる大会として、第16回都市対抗野球大会は日本の野球史において重要な一ページを占めています。

まとめ

第16回都市対抗野球大会は、戦意高揚という国策のもとで開催された戦時下の大会であり、前年の中止を経て2年ぶりに復活しました。全京城の優勝という結果に加え、橋戸賞該当者なしという異例の記録を残しました。この大会を最後に3年間の中断に入り、外地チームの参加が終了するなど、戦況の悪化が色濃く反映された大会でした。戦時下のスポーツのあり方、そして激動の時代における都市対抗野球の歴史を語る上で欠かせない大会です。

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