第17回都市対抗野球大会

第17回都市対抗野球大会

大会概要と背景

1946年、終戦からわずか1年後の夏、日本のスポーツ界にもようやく活気が戻りつつありました。GHQの管理下から解放され、プロ野球の再開も可能となった東京・後楽園球場を舞台に、待ち望まれていた都市対抗野球大会が復活を遂げたのです。第17回大会は、1946年8月3日から9日までの1週間にわたり開催されました。物資不足は続いていたものの、全国各地で厳しい予選が行われ、選ばれた16の代表チームが聖地に集結。復興への希望を象徴するかのような熱戦が繰り広げられ、GHQ関係者を含む多くの観客が見守りました。この大会から、惜しくも決勝進出を逃したチームのために3位決定戦が新たに設けられました。

初出場初優勝と黒獅子旗の物語

大会の栄冠に輝いたのは、初出場ながら快進撃を見せた岐阜市・大日本土木でした。チームの中心は、戦前の中等学校野球で名を馳せた岐阜商業高校のOBたち。彼らは卓越した野球センスとチームワークを発揮し、投打がかみ合った見事な戦いぶりで、都市対抗初出場にして初優勝という快挙を成し遂げました。

しかし、この大会にはもう一つの、感動的なドラマがありました。都市対抗野球の優勝旗である「黒獅子旗」を巡る物語です。本来、優勝チームにはこの黒獅子旗が授与されるはずでした。ですが、前回の第16回大会（戦時中の1942年）の優勝チームは、当時の朝鮮・京城（現ソウル）を本拠地としていた全京城。終戦後、多くの関係者は黒獅子旗が海を越えて戻ってくることはないだろうと半ば諦めていました。そして閉会式当日、大日本土木には優勝旗ではなく表彰状のみが手渡される事態となったのです。

ところが、黒獅子旗は奇跡的に日本の土を踏んでいました。全京城の3番打者を務めていた秋山光夫選手が、1945年10月14日、大陸からの引揚げ船に乗る際、黒獅子旗を自らの体にしっかりと巻きつけ、アメリカ軍による所持品検査を受けるリスクをも覚悟の上で、文字通り命がけで持ち帰ったのです。故郷である香川県丸亀市に帰還した秋山選手は、この大切な旗を地元の有力者に託して預けました。

その後、丸亀市長が市内に都市対抗の優勝旗があるという話を聞きつけ、大会を主催する毎日新聞社に連絡を入れたのです。この情報を受けて、秋山選手から毎日新聞社へと黒獅子旗は無事返還されました。そして、毎日新聞記者の小野三千麿氏の手により、大会終了から約2ヶ月後の1946年10月、大日本土木の本社において改めて優勝旗授与式が執り行われたのです。戦火を逃れ、遠い異国から選手によって守り抜かれた黒獅子旗は、日本の野球復興を祝うかのように、新たな王者の手に渡りました。

この初代黒獅子旗は、長年の使用による老朽化のため、1974年の第45回大会を最後にその役目を終え、2代目の旗に引き継がれました。現在、歴史を見守ってきた初代の黒獅子旗は、東京都文京区にある公益財団法人 野球殿堂博物館に大切に収蔵されており、多くの野球ファンにその存在を伝えています。

大会の記録

大会期間中、後楽園球場では連日熱戦が繰り広げられました。決勝戦は8月9日に行われ、大日本土木が見事勝利を収め、初出場初優勝を果たしました。また、この大会の最高殊勲選手に贈られる橋戸賞には、優勝チームの投手である中原宏が選出されました。

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