第2代サンタ・クルス侯爵によるジェノヴァ救援

第2代サンタ・クルス侯爵によるジェノヴァ救援

「第2代サンタ・クルス侯爵によるジェノヴァ救援」は、スペインの画家アントニオ・デ・ペレーダが1634年から1635年にかけて制作した油彩画です。本作は当初、スペイン王室のコレクションに所蔵されていましたが、フランス革命時にフランス軍の元帥セバスティアニによって持ち去られ、その後ロンドンやパリの個人コレクターを経て、1912年にマルセル・デ・ネメスによってマドリードのプラド美術館に寄贈されました。

背景

この作品は、スペイン国王フェリペ4世の趣味の宮殿であるブエン・レティーロ宮殿の装飾用に描かれた戦勝画の一つとして位置付けられています。ペレーダはこの宮殿の「諸王国の間」を飾るために依頼を受け、23歳という若さで制作に取り掛かりました。彼は当時、宮廷で有名なイタリア人アーティストのジョヴァンニ・バッティスタ・クレッシェンツィの指導の下で働いており、彼の影響を受けたものと思われます。

作品の内容

この絵は、1625年にサヴォイア公爵とフランス軍に包囲されたジェノヴァが、スペインのサンタ・クルス侯爵アルバロ・デ・バサンによって解放された瞬間を捉えています。画面左には、高い石壁を背景にした鎧をまとった二人の兵士が描かれ、彼らの姿が左側を締めています。このキーモメンタムを形成する二人の兵士の姿の後方から、ジェノヴァの元首がサンタ・クルス侯爵に感謝の意を示す様子が見てとれます。彼が帽子を脱いでいるのは、敬意の印であり、画面中央に位置する侯爵に向けた重要なシーンを強調しています。

右側には、華やかな衣服を纏った小姓の少年が描かれており、彼は観客に向かってこの歴史的な瞬間を指し示しています。このキャラクターは、ティツィアーノの作品にも見られる先例があり、王室コレクションの影響が伺えます。

背景は、実際のジェノヴァではなく、ペレーダが創造した架空の都市を感じさせるものです。尖塔を持つ北方のゴシック様式の建物が並び、上部中央には混乱を極めたフランス軍の兵士や艦船が描かれています。その描写は、演劇的でありつつ、臨場感に乏しいとの批評もありますが、一方で、人物の威厳といった点ではベラスケスの影響が見受けられます。

画家と作品の持つ意義

サンタ・クルス侯爵がジェノヴァを解放した時点で54歳でしたが、ペレーダはその後に彼と接点があったとされ、侯爵を描くことができたのは幸運でした。特に、ペレーダが作品制作時に自らの若さを意識しつつ、一流の先人たちから学び、影響を受けたことは他の作品にも強く反映されています。特に、ヴェネツィア派の色彩豊かさと質感が本作の魅力を引き立てており、作品全体が物語的にまとまっています。

署名の部分には「Antonius Pereda / aetatis suae...」と記されており、彼が若さを誇りに思ったことが窺えます。残念ながら、ペレーダはクレッシェンツィの死により宮廷の仕事を失うこととなりますが、その後の作品でも彼の才能は発揮され続けます。

このように、「第2代サンタ・クルス侯爵によるジェノヴァ救援」は、ペレーダの画家としての成長を示す重要な作品であり、その歴史的背景や象徴性が観る者に深い印象を与えます。

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