第21回全国中等学校優勝野球大会

第21回全国中等学校優勝野球大会

1935年（昭和10年）の夏、兵庫県西宮市にある阪神甲子園球場では、第21回を迎えた全国中等学校優勝野球大会が盛大に開催されました。本大会は8月13日から始まり、9日間にわたる熱い戦いが繰り広げられた後、8月21日に幕を閉じました。

この第21回大会は、後の高校野球の歴史において特筆すべき変化をもたらした大会として知られています。それは、開会式の入場行進においてブラスバンドが初めて登場したことです。これ以前の大会ではブラスバンドの演奏はありませんでしたが、この年から導入され、選手の行進に彩りを添えるようになりました。そして、このブラスバンドの演奏には、既存の大会歌とは別に、この大会のために新たに制定された楽曲が用いられました。

その楽曲は『全国中等学校優勝野球大会行進歌』と名付けられ、日本の音楽界の大家である山田耕筰氏が作曲と指揮を手掛けました。選手たちは、山田氏の指揮によるブラスバンドの演奏に合わせて、甲子園のグラウンドへと入場しました。この入場スタイルの導入は、その後の大会にも引き継がれ、現在に至るまで高校野球開会式の象徴的な光景となっています。

興味深いことに、この『全国中等学校優勝野球大会行進歌』は、その表題が示す通り「行進曲」ではなく「行進歌」とされています。これは、富田砕花氏によって歌詞がつけられていたためです。しかし、大会の歴史において、この富田氏による歌詞が実際に歌唱された記録はないとされています。歌詞は存在しながらも、演奏されるのは曲のみ、という形で伝統が築かれていきました。

本大会には、全国各地から厳しい予選を勝ち抜いた多くの代表校が出場し、甲子園の優勝旗を目指しました。1回戦から各球場で白熱した試合が展開され、例えば甲府中が青島中に対して10対3と大勝を収めた試合や、育英商が米子中を5対4の僅差で下した試合などがありました。2回戦、そして準々決勝へと進むにつれて、戦いはさらに激しさを増しました。特に、延長戦にもつれ込む接戦が相次ぎ、選手の粘り強さやチームワークが試されました。2回戦では大分商対千葉中が延長12回の熱戦を演じ、準々決勝では松山商対嘉義農林が延長10回、そして準決勝では育英商対早稲田実がこれもまた延長10回の激闘を繰り広げました。これらの激戦を制し、決勝へと駒を進めたのは松山商と育英商でした。

こうして準決勝までを勝ち抜いたチームによって決勝戦が行われ、第21回大会の優勝校が決定しました。この大会には、後にプロ野球などで活躍する多くの才能豊かな選手たちも出場しており、彼らにとっても甲子園での経験は貴重な財産となったことでしょう。大会は、数々のドラマを生み、新たな伝統を築きながら、無事にその幕を閉じました。第21回大会は、単なる勝敗だけでなく、入場式のブラスバンド導入という歴史的な一歩を踏み出した、記憶に残る大会となりました。

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