第21回社会人野球日本選手権大会

1994年 10月16日から10月24日までの期間、兵庫県のグリーンスタジアム神戸を舞台に、第21回社会人野球日本選手権大会が開催されました。

大会の特色と展開

例年多くの注目を集めるこの大会は、波乱含みの幕開けとなりました。その年の都市対抗野球で頂点に立った本田技研鈴鹿は予選で涙を飲み、準優勝の西濃運輸も本戦の初戦で姿を消すという意外な展開となりました。さらに、前年大会の覇者である住友金属も、予選段階で本大会への出場権を逃すなど、前評判の高いチームが早期に姿を消す結果となりました。

一方で、かつて大会の常連として知られ、第16回大会までに15回の出場を果たしていた古豪・松下電器が、5年ぶりに本戦の舞台に返り咲き、存在感を示しました。また、大昭和製紙北海道の休部に伴い、その歴史と志を受け継ぐ形で誕生したクラブチーム、ヴィガしらおいが全国大会への初出場を果たしました。これは、クラブチームとしては14年ぶり2度目の本戦出場という画期的な出来事であり、アマチュア野球界における新たな可能性を示す一歩となりました。

そして、この大会を最後に活動を休止することが発表されていた川崎製鉄神戸は、チームにとって最後の公式戦となる本大会で躍動しました。彼らは粘り強い戦いを続け、チーム史上最高成績と並ぶベスト4まで勝ち進み、有終の美を飾る活躍を見せました。

決勝戦：関東勢の激突

大会の頂点を決める決勝戦は、日本通運と日産自動車という、いずれも関東地区の強豪同士の対戦となりました。緊迫した試合は終盤にかけて壮絶な点の取り合いとなり、両チーム一歩も譲らない白熱した展開となりました。この打ち合いを制し、栄光を掴んだのは日本通運でした。粘り強く終盤の相手の猛追を振り切り、チーム創設以来となる初の日本一の座に輝きました。

一方、前年に続く2年連続の決勝進出を果たした日産自動車は、前年の雪辱を期してこの一戦に臨みましたが、またしても一歩及ばず、惜しくも準優勝に終わりました。

決勝戦の投手は、日本通運が黒沢投手が勝利投手となり、日産自動車は木寺投手が敗戦投手となりました。本塁打は、日本通運の松田選手が2本、日産自動車の青柳選手が1本を放つなど、まさに「打ち合い」を象徴するような展開でした。

大会を彩った選手たち

この大会で特に活躍を見せた選手たちには、以下の表彰が贈られました。

最高殊勲選手賞: 松田訓（内野手：日本通運）
敢闘賞: 北川哲也（投手：日産自動車）
打撃賞: 田中泰（内野手：日本通運）
首位打者賞: 中本浩（内野手：松下電器） - 11打数7安打、打率.636

また、ポジションごとに優れた活躍を見せた選手たちが大会優秀選手として選出されました。

投手: 北川哲也（日産自動車）、豊田次郎（川崎製鉄神戸）
捕手: 工藤寿（日本通運）、大城健（川崎製鉄神戸）
一塁手: 田中泰（日本通運）、中本浩（松下電器）
二塁手: 大平幸治（日産自動車）、宮下森（日本通運）
三塁手: 渡辺等（日産自動車）
遊撃手: 藪宏明（日本通運）、木田健一郎（川崎製鉄千葉）
外野手: 早川健一郎（日産自動車）、米田幸司（川崎製鉄神戸）、石田勝彦（プリンスホテル）、安藤芳人（本田技研熊本）、ケニー・ハリソン（川崎製鉄千葉）
指名打者: 松田訓（日本通運）

特筆すべき記録

この大会では、打撃面で特筆すべき記録も生まれました。1回戦の神戸製鋼対NTT東北戦と、同じく1回戦の松下電器対西濃運輸戦において、それぞれ出場した両チームが「毎回安打」という記録を達成しました。これは、各回の攻撃で必ずヒットを記録するという珍しい記録であり、この大会のレベルの高さを物語るエピソードと言えるでしょう。

第21回大会は、有力チームの早期敗退、クラブチームの歴史的な出場、休部チームの健闘、そして初優勝チームの誕生と、多くのドラマが生まれた記憶に残る大会となりました。

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