第21回都市対抗野球大会

第21回都市対抗野球大会

1950年8月6日から8月14日にかけて、後楽園球場にて第21回目の都市対抗野球大会が開催されました。この大会は、戦後の社会人野球界が直面していた大きな転換点であり、現在の都市対抗野球を象徴する重要な制度が誕生した記念すべき大会として知られています。

前年の1949年、日本のプロ野球は従来の1リーグ制から2リーグ制へと移行し、参加チームが8球団から15球団へと急増しました。これにより、各球団は多くの選手を必要とし、社会人野球界から有力選手を大量に引き抜く動きが活発化しました。その数は実に100名近くにも達し、社会人野球は未曽有の選手流出という危機に瀕しました。この影響は大きく、前回大会で優勝を飾った強豪チーム、星野組（門司市）もチーム解散に追い込まれる事態となりました。

社会人野球全体のレベル低下が懸念される中、大会の主催者はこの窮状を打開するための新たな方策を模索しました。そこで採用されたのが、毎日新聞記者であった小野三千麿氏の発案によるアイデアです。それは、「地区予選で惜しくも敗れたチームから、特に優れた技量を持つ選手を期間限定で受け入れ、地域最強のメンバーを擁するチーム同士が本大会で競い合う」という画期的なものでした。このアイデアこそが、現在まで都市対抗野球の最大の特色となっている「補強選手制度」の始まりです。

こうした背景のもと、本大会には地区予選を勝ち上がった19チームが集結しました。前回覇者である星野組が解散したため、新たな優勝チームが生まれることになります。激戦を勝ち抜き、栄えある黒獅子旗を手にしたのは、大阪代表の新鋭、全鐘紡でした。全鐘紡は予選で、強力な日本生命チームを破っており、本大会ではその日本生命をはじめとする複数のチームから主力選手を補強選手として迎え入れました。この補強制度を効果的に活用することでチーム力を飛躍的に高め、都市対抗初出場ながら見事な初優勝を飾る快挙を成し遂げたのです。

また、この大会には特別な国際的な側面もありました。当時の連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥の意向により、今大会の優勝チームを主体とした日本のアマチュア野球選抜チームと、全米優勝チームとの間で親善試合が行われることになったのです。全鐘紡を中心に編成された全日本アマチュア代表チームは、同年9月に全米代表の「ケープハーツ・チーム」を迎え、東京と大阪で計5試合を実施しました。結果は日本の1勝4敗とアメリカチームに軍配が上がりましたが、戦後間もない時期における貴重な国際交流であり、日本の野球の発展にとっても重要な経験となりました。

大会の主要な結果は以下の通りです。

3位決定戦: 大西投手が勝利投手となりました。
決勝戦（8月14日）: 全鐘紡が勝利を収めました。全鐘紡の片山投手が勝利投手、高橋選手が本塁打を記録しました。

個人表彰では、最も活躍した打者または野手に贈られる橋戸賞に全鐘紡の右翼手、高橋久雄選手が選ばれました。また、大会を通じて最も活躍した投手または捕手に贈られる久慈賞は、熊谷組の捕手、櫛田由美彦選手が受賞しました。

第21回大会は、プロ野球の急拡大という外部環境の変化に対応し、補強選手制度という独自の発展を遂げる契機となった、都市対抗野球の歴史において極めて重要な位置を占める大会と言えるでしょう。

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