第24回都市対抗野球大会

第24回都市対抗野球大会

1953年7月5日から12日までの8日間、東京の後楽園球場にて、社会人野球の最高峰を決める第24回都市対抗野球大会が盛大に開催されました。

大会を巡る特別な背景

今大会は、例年とは異なる特別な事情を抱えての開催となりました。社会人野球協会は、大会終了後に今大会で活躍した選手たちを中心に編成される全日本チームを、国際親善のためにハワイへ遠征させることを決定していました。この歴史的な海外遠征を実現するため、大会日程は大幅に前倒しされ、例年は8月に閉幕することが多かった都市対抗野球において、史上初めて7月中に全日程を終える異例のスケジュールが組まれました。

参加チームと大会の焦点

本大会には全国各地から予選を勝ち抜いた、あるいは推薦を受けた合計20チームが出場し、栄光の黒獅子旗を巡って熱戦を繰り広げました。

大会開幕前から最大の注目を集めていたのは、前人未踏の4連覇を目指す前回覇者、全鐘紡（大阪市）でした。彼らはその圧倒的な強さで順調に勝ち上がり、大会が進むにつれて、「果たして、この絶対王者の連覇を止めるチームは現れるのか」という点が、野球ファンすべての関心事となりました。

驚異のルーキーと決勝戦

全鐘紡が順当に勝ち進む一方、決勝戦に駒を進めたのは、静岡県富士市を代表する大昭和製紙でした。彼らの快進撃を支えたのは、当時まだ18歳の高卒ルーキー、黒柳巽投手でした。若干ながら物おじしない大胆なピッチングと切れのある変化球で、並み居る強豪チームを次々と打ち破り、チームを初の決勝へと導いたのです。

迎えた7月12日の決勝戦。前年までの3連覇という偉業を成し遂げた全鐘紡と、ルーキー黒柳投手を擁して勢いに乗る大昭和製紙が相まみれました。この大一番で再び先発のマウンドに上がった黒柳投手は、あの強力な全鐘紡打線を相手に、信じられないようなピッチングを披露します。巧みな投球術で打者を翻弄し、ヒットをわずか1本しか許さないという圧巻の1安打完封勝利を達成したのです。

この黒柳投手の歴史的な投球により、大昭和製紙はチーム創設以来、初の都市対抗野球優勝を飾りました。

優勝の意義と表彰

大昭和製紙の初優勝は、単に新たな王者の誕生というだけでなく、黒獅子旗の歴史においても大きな意味を持ちました。黒獅子旗が東日本のチームにもたらされたのは、第13回大会で藤倉電線（東京）が優勝して以来、実に14年ぶりのことでした。

今大会で最も顕著な活躍を見せた選手に贈られる橋戸賞には、決勝で歴史的な投球を見せた大昭和製紙の黒柳巽投手が満場一致で選ばれました。また、久慈賞（敗者の中で最も印象に残った選手）には、全鐘紡の捕手、種田吉富選手が選ばれ、その奮闘が称えられました。

なお、今大会の3位決定戦では、東洋レーヨン（大津市）が勝利を収めています。

第24回大会は、国際交流という新たな目的のために開催時期が変更されるという歴史的な側面を持ちつつ、絶対王者全鐘紡の前に立ちはだかったルーキー黒柳投手の伝説的な活躍と、大昭和製紙の劇的な初優勝という、語り草となる多くのドラマを生んだ大会として幕を閉じました。

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