第25回社会人野球日本選手権大会

第25回社会人野球日本選手権大会

1998年10月3日から10月11日にかけ、大阪ドームにて第25回社会人野球日本選手権大会が開催されました。この大会は、社会人野球チームが年間を通じて目指す主要タイトルの一つであり、全国から強豪チームが集結し、熱戦を繰り広げました。

今大会の注目すべき点として、近畿地区から2チームが選手権に初出場を果たしました。都市対抗野球には過去9回出場経験のある小西酒造が選手権初参戦となり、また大和銀行はチーム創設から23年目にして、夏の都市対抗、秋の日本選手権を通じて初の全国大会出場を決め、新たな歴史を刻みました。

大会は序盤から波乱含みでした。その年の夏の都市対抗野球を制し、優勝候補の一角と目されていた日産自動車が、1回戦で同業の三菱自動車岡崎に敗れる波乱が起きています。

各チームが勝ち上がり、決勝戦へと駒を進めたのは、強力な打線を武器とするNTT関東と、安定した投手力を誇る日本生命でした。両チームの実力が伯仲した決勝戦は、大会最終日である10月11日に行われました。

決勝戦はまさに死闘となりました。両チームによる逆転に次ぐ逆転の激しい攻防が展開され、試合は緊迫したムードに包まれました。本塁打も飛び交う壮絶な打撃戦となり、最後まで勝敗の行方が分からない展開が続きました。そして、最終的に均衡を破ったのはNTT関東でした。NTT関東の沖原佳典選手が放ったサヨナラ適時打により、チームは劇的な勝利を収め、初の日本選手権優勝を掴み取りました。

この優勝は、NTTグループの組織再編により、翌年にNTT東日本として統合されることが決まっていたNTT関東にとって、チームの歴史に刻む有終の美を飾るビッグタイトルとなりました。

大会を通じて最も活躍した選手に贈られる最高殊勲選手賞には、優勝チームであるNTT関東の内野手、阿久根鋼吉選手が選ばれました。阿久根選手は打撃でもチームを牽引し、打撃賞も受賞する活躍を見せました。惜しくも優勝は逃しましたが、日本生命の辻太一投手が敢闘賞を受賞。また、首位打者には松下電器の外野手、井上大選手が輝き、11打数7安打、打率.636という驚異的な数字を記録しました。

大会の優秀選手には、優勝したNTT関東、準優勝の日本生命を中心に、以下の選手たちが選出されました。

投手
辻 太一（日本生命）
土井 善和（日本生命）
立石 尚行（NTT関東）
稲葉 孝夫（本田技研鈴鹿）
捕手
門奈 雄虎（JT）
鈴木 輝彦（NTT関東）
一塁手
キーナン・ティミィ（NTT関東）
二塁手
阿久根 鋼吉（NTT関東）
西岡 隆一（松下電器）
三塁手
福留 孝介（日本生命）
北口 正光（松下電器）
遊撃手
野上 修（日本生命）
沖原 佳典（NTT関東）
外野手
下山 真二（日本生命）
飯塚 智広（NTT関東）
井上 大（松下電器）
夏目 昌則（三菱自動車岡崎）
指名打者
鎌田 倫昌（JT）

グラウンドでの戦いだけでなく、応援も大会を盛り上げました。応援団コンテストでは、川崎製鉄水島が最優秀賞を獲得したほか、大和銀行がチームワーク賞、本田技研鈴鹿がユニーク賞、大阪ガスがはつらつ賞を受賞しました。

大会記録としては、NTT東北が1回戦で毎回安打を記録したこと、日本通運の広田投手が1回戦で6連続奪三振（大会タイ記録）を達成したこと、そして三菱自動車岡崎が準々決勝で1試合チーム最多失策となる6失策を記録したことなどが特筆されます。

第25回社会人野球日本選手権大会は、NTT関東の劇的な初優勝という記憶に残る結末を迎え、多くの名勝負と記録が生まれた、社会人野球の歴史において重要な位置を占める大会となりました。

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