第28回全国中等学校優勝野球大会

第28回全国中等学校優勝野球大会

終戦からおよそ1年が経過した1946年（昭和21年）夏、日本の戦後復興期において、中断されていた全国中等学校優勝野球大会が復活しました。第28回大会として、1946年8月15日から8月21日までの期間、阪急西宮球場にて開催されました。この大会は、戦時下の休止を経て再開された最初の大会であり、平和な時代の到来を告げる象徴的な出来事の一つでした。

開催の背景と球場

大会復活への動きは、終戦直後の1945年秋に朝日新聞社が全国的な調査を行ったことから始まりました。その結果を受けて、1946年1月21日には大会を夏に再開する旨が公に発表されました。しかし、戦時中および終戦直後の混乱の影響は大きく、野球の聖地である甲子園球場は連合国軍総司令部（GHQ）に接収されており、使用することができませんでした。そのため、この第28回大会は、代替地として阪急西宮球場を舞台として開催されました。当時の阪急西宮球場は、内外野ともに全面天然芝という素晴らしいコンディションでした。

大会の特色と開会式

戦後初の大会となった第28回大会には、様々な特色が見られました。開会式では、戦前最後の大会で優勝した海草中が、6年間にわたり大切に保管していた大優勝旗を球場に返還するという感動的な一幕がありました（優勝旗は一度、戦時中の1942年に大阪の朝日新聞社に返還されていましたが、この場で改めて披露・返還されました）。また、GHQの武官からの祝辞や、米国から贈呈された野球ボールの披露、さらには米軍機による超低空での祝賀飛行など、当時の国際的な状況や戦後ならではの光景が見られました。

参加校の変化

戦前の大会に出場していた地域のうち、日本の施政下から離れた朝鮮、満洲、台湾では、残念ながら地方大会が実施されず、全国大会への参加はありませんでした。また、沖縄のチームも南九州大会への参加を見送りました。こうした地域的な変化がある一方で、戦前は全国大会への出場経験がなかった高知県から、城東中が記念すべき初出場を果たしました。

熱戦とエピソード

大会期間中は、全国から集まった代表校によって熱戦が繰り広げられました。1回戦では京都二中が成田中に1対0と辛勝し、愛知商や城東中が初戦を突破しました。2回戦では鹿児島商が大勝し、浪華商も順当に勝ち進みました。下関商と愛知商の試合は延長11回までもつれる接戦となりました。準々決勝、準決勝も白熱した試合が続き、京都二中と浪華商が決勝に駒を進めました。また、この大会では計4本のホームランが記録されました。城東中の大野一郎選手が第1号を放ち、浪華商の広瀬吉治選手が2本、宇都宮一選手が1本を記録しています。

この大会で生まれた最も有名なエピソードの一つに、「甲子園の土」の持ち帰りの始まりとされる出来事があります。準決勝で浪華商に敗れた東京高師付中の佐々木迪夫監督が、試合後、選手たちに「さあ、5年生（最上級生）はいいから、他は自分のポジションへ行って土を取ってこい。来年、またここへ返しに来よう」と語りかけました。この言葉を受けた選手たちは、それぞれの守備位置の土を手ぬぐいに包んで持ち帰りました。これは、敗れた球児が次への誓いとして球場の土を持ち帰るという、現在まで続く高校野球の伝統の最初の記録とされています。

困難な時代の中で開催された第28回大会は、野球が人々に希望や感動を与える力を持っていることを改めて示した大会であり、日本の復興への歩みと共に刻まれた歴史的な大会となりました。

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