第29回ベルリン国際映画祭

第29回ベルリン国際映画祭は、1979年2月20日から3月3日までの期間、開催されました。この回は、ベトナム戦争を題材とした映画『ディア・ハンター』の上映を巡り、大きな議論を呼びました。ソ連は、同作品におけるベトナムの描写に偏りがあると抗議、これを受け、社会主義諸国は映画祭への参加をボイコットするという事態に発展しました。

政治的思惑が影を落とす中、映画祭は数々の優れた作品を世界に紹介しました。金熊賞には、ペーター・リリエンタール監督の『David』が輝きました。銀熊賞は、審査員特別賞をユーセフ・シャヒーン監督の『アレキサンドリアWHY?』、監督賞をアストリズ・ヘニング＝イエンセン監督（『冬生まれの子ら』）、男優賞をミケーレ・プラチド（『美しき少年/エルネスト』）、そして女優賞をハンナ・シグラ（『マリア・ブラウンの結婚』）がそれぞれ受賞しました。

コンペティション部門には世界各国から長編映画が多数出品されました。（アルファベット順に列挙すると以下の通りです。邦題がない場合は原題と英題を記載します。）

審査員は、映画界や文学界の著名人から構成されていました。イギリスの女優ジュリー・クリスティ、イタリアの監督リリアーナ・カヴァーニ、ハンガリーの監督Pál Gábor、ソ連の作家・脚本家ロマン・ギャリー、西ドイツの女優イングリット・カーフェン、西ドイツの俳優ゲオルグ・アレクサンダー、そしてフィンランドのプロデューサーヨーン・ドーネルといった面々が、厳正な審査を行いました。彼らの深い洞察力と経験が、受賞作品選考に大きく貢献したことは言うまでもありません。

第29回ベルリン国際映画祭は、社会主義諸国の不参加という異例の事態に見舞われながらも、多くの優れた映画作品を紹介し、世界中の映画関係者にとって記憶に残るイベントとなりました。政治的背景と芸術表現が複雑に絡み合ったこの映画祭は、冷戦時代の国際情勢と映画界の関係を改めて考えさせる、重要な歴史的出来事と言えるでしょう。公式サイト（ドイツ語・英語）では、より詳細な情報が確認できます。

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