第29回全国中等学校優勝野球大会

第29回全国中等学校優勝野球大会 概要

1947年（昭和22年）8月13日から8月19日にかけて、兵庫県西宮市の甲子園球場で第29回全国中等学校優勝野球大会が開催されました。この大会は、「中等学校」という名称で行われた全国大会としては最後のものとなり、戦後の学制改革を前にした歴史的な意義を持つ大会となりました。

開催地の状況と大会の規模

太平洋戦争の影響により中断されていた全国中等学校優勝野球大会が、1946年に復活したのに続き、本大会は1940年の第26回大会以来、7年ぶりに聖地である甲子園球場での開催となりました。しかし、球場には戦争の爪痕が残されており、名物であった大きな鉄傘は戦時中の金属供出によって失われたままでした。また、通常外野に設置されているラッキーゾーンは、この大会期間中は撤去されていました。

大会への参加校数は、前年の大会から実に380校も増加し、初めて1000校の大台を超える1125校が地方予選に挑みました。これは、戦争を経て野球にかける情熱が再び燃え盛っていたことを示しており、全国から選ばれた代表校が甲子園に集結しました。

熱戦の軌跡

大会は、全国の予選を勝ち抜いた精鋭たちによる手に汗握る試合の連続となりました。特に記憶に残る熱戦として、1回戦の福岡中対谷村工商戦は延長11回までもつれ込む接戦となりました。2回戦では、成田中が鳥取一中を10対0と圧倒するなど、力の差を見せる試合もありました。また、京都二商対函館工戦も延長10回の死闘となりました。

準々決勝も激しい戦いが繰り広げられました。仙台二中と下関商の試合は延長10回に及ぶ投手戦となり、仙台二中がサヨナラで勝利を収めました。また、京都二商は準々決勝だけで3本の本塁打を放つなど、打撃陣が活躍を見せました。

決勝戦と栄光

準決勝では、小倉中が延長10回に成田中を下し、岐阜商が仙台二中を破って、それぞれ決勝へと駒を進めました。

1947年8月19日に行われた決勝戦は、九州代表の小倉中と東海代表の岐阜商の対戦となりました。試合は小倉中が序盤から優位に進め、6対3で岐阜商を破り、見事優勝旗を手にしました。この優勝は、全国中等学校優勝野球大会において、九州勢としては史上初の快挙となりました。また、この決勝戦の試合時間はわずか1時間12分であり、これは現在に至るまで大会最短記録として残っています。

大会を彩った選手たち

今大会では、合計8本の本塁打が記録されました。特に小倉中の井生元固選手、松尾研選手、西上岩蔵選手は決勝トーナメントでそれぞれ本塁打を放ち、チームの優勝に貢献しました。また、京都二商は準々決勝だけで3本塁打と長打力を発揮しました。

その他にも、後にプロ野球などで活躍する多くの才能がこの大会に出場していました。例えば、桐生中の常見忠選手、海草中の伊沢修選手、浪華商の阪田正芳選手、下関商の引地信之選手などが、若き日の熱いプレーを繰り広げました。

この第29回大会は、中等学校野球の歴史に幕を閉じるとともに、戦後復興期におけるスポーツの力、そして次世代への希望を示す大会として、その名を刻んでいます。

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