第29回社会人野球日本選手権大会

第29回社会人野球日本選手権大会 概要

[2002年]]（平成14年）の秋、社会人野球の頂点を決める[日本選手権大会は、第29回大会として大阪ドームを舞台に開催されました。大会期間は10月12日から20日までの9日間でした。

この大会は、社会人野球においてバットの素材が金属製から木製へと変更された時期にあたり、その影響が顕著に現れた大会となりました。同年夏の都市対抗野球と同様、長打の数が激減し、スコアボードに二桁得点が記録される試合は一つも見られませんでした。これにより、従来の強力打線による打ち合いではなく、投手力や守備力が勝敗を分ける、文字通り「守り勝つ野球」がより重要視される傾向が強まりました。

大会には、各地の予選を勝ち抜いた精鋭チームが集結しました。注目されたチームの中には、同年末をもって活動休止や他の企業との統合が決まっていたチームの姿もありました。例えば、この年の夏の都市対抗野球で優勝を飾った名門いすゞ自動車は、秋の日本選手権では関東予選でまさかの敗退を喫しました。また、同じく活動休止が決まっていた神戸製鋼や、NKKとの統合を控えていた川崎製鉄水島も、いずれも大会の早い段階である1回戦で姿を消しました。長年の歴史を持つチームにとって、この大会が事実上最後の全国大会となる中、その結果は多くのファンの注目を集めました。

激戦を勝ち抜き、決勝戦の舞台に進出したのは、共に充実した投手陣を擁するホンダと日本生命でした。決勝戦は10月20日に行われ、白熱した投手戦が予想されましたが、試合は序盤から日本生命が相手先発投手を効果的に攻め立て、試合の主導権を握りました。リードを奪った日本生命は、投手陣がホンダ打線をしっかりと抑え込み、そのまま逃げ切って勝利を収めました。この優勝は、日本生命にとっては12年ぶり、大会史上2回目の秋の栄冠となりました。

大会を通じて特に活躍した選手には、以下のような表彰が贈られました。

最高殊勲選手賞: 佐藤 充 投手（日本生命）- チームを優勝に導く圧巻の投球を披露しました。
敢闘賞: 藤井 稔也 投手（ホンダ）- 決勝で敗れはしましたが、チームを決勝まで牽引する活躍を見せました。
打撃賞: 竹間 容祐 外野手（日本生命）- チームの優勝に貢献する勝負強い打撃を見せました。
首位打者賞: 原田 能英 内野手（三菱重工長崎）- 11打数6安打で打率.545を記録し、最高打率選手に輝きました。

また、大会で顕著な活躍を見せた選手たちには、ポジションごとに大会優秀選手として表彰されました。優勝した日本生命からは、最高殊勲選手の佐藤投手をはじめ、土井投手、鷲北捕手、下野三塁手、竹間外野手、大宅指名打者の6名が選ばれています。準優勝のホンダからも、敢闘賞の藤井投手、ランドル投手、高松三塁手、米山遊撃手、岡野外野手の5名が選出されるなど、両チームの主力選手が多くを占めました。他にも東芝、新日本製鐵君津、三菱重工長崎、松下電器、東京ガスといったチームから、多くの実力者が選出されています。

この大会では、いくつかの興味深いタイ記録も生まれました。

1イニングチーム最多二塁打: 4（タイ記録）
東京ガスが1回戦のJR北海道戦で記録しました。
1試合チーム最多犠打: 6（タイ記録）
JR東日本東北が1回戦のTDK千曲川戦で記録しました。
* 1イニングチーム最多犠打: 3（タイ記録）
三菱自動車岡崎が2回戦の東京ガス戦で記録しました。

木製バットへの移行という大きな変化があった中で開催された第29回大会は、投手力と堅実な守備、そして機動力や小技といった要素がより重要になる、新たな社会人野球のスタイルの一端を示す大会となりました。その中で日本生命が12年ぶりの優勝を果たし、歴史に名を刻みました。

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