第3回全日本都市対抗野球大会

第3回全日本都市対抗野球大会

1929年（昭和4年）の夏、日本の野球史において重要な位置を占める都市対抗野球大会は、その第3回大会を東京・明治神宮野球場にて開催しました。会期は8月3日から8月7日までの5日間でした。

この年の大会は、参加チーム数が前回からさらに1チーム増え、全国から選ばれた14チームが出場しました。参加都市の顔ぶれも定着しつつあり、うち7チームは第1回大会から3年連続での出場を果たしており、都市対抗野球が各地に根を下ろし始めていた様子がうかがえます。

特筆すべきは、当時の日本の統治下にあった京城府（現在のソウル）からの代表チームに関する経緯です。京城予選で前年代表の京城殖産銀行を下して代表権を獲得したのは京城府庁チームでした。しかし、大会開幕を目前にして、突然、府庁当局から選手団の東京派遣を認めないという命令が下されてしまいます。これを受けて、朝鮮野球連盟と朝鮮体育協会は緊急に協議を行い、対応を迫られました。そして、ある画期的な決定がなされました。それは、当時すでに実業団野球連盟に加盟していた京城府内の有力選手を集め、ベストナインを選抜して「全京城」という臨時チームを編成し、大会に派遣するというものでした。この「全京城」チームは、結果的に日本の統治が続いていた時代の第16回大会まで、朝鮮からの代表チームとして都市対抗野球に出場を続けることとなり、大会の歴史において特別な位置を占めることになります。

本大会の頂点に立ったのは、記念すべき第1回大会の覇者である満洲倶楽部（大連市）でした。彼らは前年の大会でまさかの予選敗退を喫しており、その雪辱に燃えていました。捲土重来を期した満洲倶楽部（けんどちょうらい）は、チーム力の底上げを図るべく、当時の野球エリートが集まる東京六大学で活躍した選手たちを積極的に補強しました。この補強が奏功し、チームは圧倒的な破壊力を持つ強力打線を形成することに成功します。打線は大会を通じて相手投手を打ち込み、チームを勝利へと導きました。満洲倶楽部は、この強力な打撃を武器にトーナメントを勝ち進み、決勝戦でもその力を遺憾なく発揮。見事に2年ぶりとなる都市対抗野球の優勝旗、黒獅子旗を再びその手に収めました。

第3回大会は、出場チーム数の増加による大会規模の拡大、京城代表を巡る異例のチーム編成という歴史的な出来事、そして初代王者の満洲倶楽部が圧倒的な打線で復活優勝を飾るなど、様々なドラマが生まれた大会となりました。この大会は、都市対抗野球が全国的な注目を集めるイベントとして定着していく過程を示す、重要な一歩となったと言えるでしょう。

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