第3次ブレア内閣 (改造)

第3次ブレア改造内閣：2006年イギリス政界の激震

2006年5月5日、イギリス首相トニー・ブレアは、第3次ブレア改造内閣を発足させました。これは、単なる内閣改造ではなく、ブレア政権の存続をかけた、大胆かつ危険な賭けでした。その背景には、地方統一選挙での労働党の惨敗と、複数の閣僚を揺るがす不祥事が存在しました。

地方選挙の大敗と閣僚不祥事：嵐の前の静けさ

組閣直前に実施された地方統一選挙で、労働党は予想をはるかに下回る結果に終わりました。この大敗は、ブレア政権への国民の不信感を露呈するものでした。さらに、この選挙直前には、複数の閣僚が不祥事を起こし、世論の批判を浴びる事態となりました。

特に注目されたのは、副首相ジョン・プレスコットの不倫騒動と、内務大臣チャールズ・クラークによる外国人犯罪者の釈放問題です。プレスコット副首相は、不倫自体は認めつつも、副首相の座にはとどまりましたが、権限は大幅に削減されました。一方、クラーク内務大臣は、1000人近い国外追放処分となるべき外国人犯罪者を国内に釈放していたことが発覚し、更迭されました。この一連の事件は「労働党のブラック・ウェンズデー」と呼ばれ、政権の危機を深刻化させました。保健相パトリシア・ヒューイットも、王立看護士学校での演説内容が批判を浴びるなど、政権は四面楚歌に陥っていました。

ブレア派とブラウン派のせめぎ合い：権力闘争の影

この内閣改造には、もう一つの大きな要因がありました。それは、ブレア首相と財務大臣ゴードン・ブラウンの間の権力闘争です。ブラウンは、将来の首相の座を虎視眈々と狙っており、ブレア派とブラウン派の間には深い亀裂が生じていました。

ブレア首相は、この内閣改造を、ブラウン派の勢力を牽制し、自身の政権基盤を固めるための手段として利用しました。彼は、側近であるジョン・リード、アラン・ジョンソン、デイヴィッド・ミリバンドといったブレア派の閣僚を、重要なポストに配置転換することで、政権の安定化を図ろうとしました。この人事異動は、徹底したものであり、「冷酷な」人事と評されたほどでした。

短命に終わった改造内閣：ブラウンへの禅譲への布石

第3次ブレア改造内閣は、2007年6月27日、ゴードン・ブラウンが新首相に就任するまで、わずか1年足らずでその幕を閉じました。この改造内閣は、ブレア政権の終焉への序章であり、ブレア首相がブラウンへの政権禅譲を準備するための、いわば「つなぎ」の政府であったと言えるでしょう。地方選挙の大敗、閣僚の不祥事、そしてブレアとブラウンの権力闘争という、複雑に絡み合った要因が、この短命の内閣を生み出したのです。

ブレア首相は、この改造内閣を通じて、自身の政治的影響力を維持しようとしましたが、最終的にはブラウンに政権を譲ることとなりました。この改造内閣は、イギリス政界の大きな転換点であり、その後の政局に大きな影響を与えました。

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