第3軍団 (ドイツ連邦陸軍)

ドイツ連邦陸軍 第3軍団：冷戦下の要衝から災害派遣まで

第3軍団（ドイツ語：III. Korps）は、1957年に設立され1994年に解散したドイツ連邦陸軍の軍団です。冷戦時代には、中部ドイツの防衛という重要な役割を担っていました。ここでは、その設立から解散までの歴史、編成、そして実働任務について詳しく解説します。

歴史

第1次編制 (1957年)

1957年3月16日、コブレンツのグナイゼナウ兵営で軍団司令部の編成準備が開始され、同年4月6日に司令部が稼働しました。当初の隷下部隊は、第2装甲擲弾兵師団と第5装甲師団であり、同年中に第2軍団から編入されました。同年中期頃には、アメリカ合衆国陸軍第7軍と共に北大西洋条約機構（NATO）の指揮系統に組み込まれました。作戦地域は、西ドイツ＝チェコスロバキア国境、および西ドイツ国内のヘッセン州、フランケン地方でした。

1958年12月1日までに第7装甲師団が第2軍団から編入され、軍団直轄部隊として第504武器連隊と第403砲兵団が編成されました。

第2次編制 (1959年)

陸軍第2次編制での1959年時点における第3軍団の隷下部隊は以下の通りです。

第2装甲擲弾兵師団（マールブルク・アン・デア・ラーン）
第4装甲擲弾兵旅団（ゲッティンゲン）
第5装甲擲弾兵旅団（カッセル）
第6装甲旅団（マールブルク・アン・デア・ラーン）
第5装甲師団（コブレンツ）
第13装甲擲弾兵旅団（ヴェッツラー）
第14装甲旅団（コブレンツ）
第15装甲旅団（コブレンツ）
第7装甲擲弾兵師団（ウンナ）
第19装甲擲弾兵旅団（アーレン）
第21装甲旅団（アウグストドルフ）

軍団直轄部隊として、第253衛生団、第3通信団、第3防空団、装甲地対空ミサイル連隊、第703工兵団などが新設されました。

第3次編制 (1970年)

1970年1月1日に第7装甲擲弾兵師団が第1軍団に配転され、代わりに第12装甲師団が第2軍団から編入されました。陸軍第3次編制では、第3軍団は以下の部隊を擁していました。

第2猟兵師団（マールブルク・アン・デア・ラーン）
第4猟兵旅団（ゲッティンゲン）
第5猟兵旅団（ホンベルク）
第6装甲旅団（ノイシュタット）
第5装甲師団（コブレンツ）
第13装甲擲弾兵旅団（ヴェッツラー）
第14装甲旅団（ディーツ）
第15装甲旅団（コブレンツ）
第12装甲師団（ファイツヘーヒハイム）
第35装甲擲弾兵旅団（ハンメルブルク）
第36装甲旅団（バート・メルゲントハイム）

第4次編制 (1980年)

1980年から軍団の一部部隊が再編成・再配置され、9個師団と軍団直轄部隊から構成され、1980年代半ばには将兵約70,000人規模に達しました。この頃、2000輌の戦車、戦闘装甲車、装甲兵員輸送車、350門以上の野砲および多連装ロケット発射器、約20,000台の車両、約200機のヘリコプターを保有し、軍団史上最大の規模となりました。

第5次編制 (1992年)

1992年以降、ヨーロッパの情勢変化に対応して連邦軍の縮小と大規模な再編成が始まりました。第3軍団は緊急展開部隊としての運用準備を担当し、第4師団と第11師団の司令部が緊急展開部隊として運用できるよう改編されることが求められました。最終的に多国籍軍団への転換は行われず、1994年4月1日に解散しました。軍団司令部の要員は陸軍指揮司令部に編入されました。

実働任務

第3軍団は、防衛任務以外にも数多くの災害派遣活動に従事しました。

1957年：エーレンブライトシュタインの地滑り
1957年、1961年：ライン川、モーゼル川の洪水
1959年：ザンクト・ゴアールスハウゼンの山火事
1960年：モロッコ・アガディールの地震（衛生部隊、特殊武器防護隊派遣）
1960年：モーゼル川下流域の死魚除去
1962年：ハンブルクでの洪水
1963年：大規模雪害
1965年：ライン川、モーゼル川沿岸域の洪水
1970年：ライン川洪水
1971年：コブレンツの東橋崩落事故
1976年：夏季の干魃、ニーダーザクセン州内での山火事
1978年：マインフランケンの洪水
1979年：ドイツ北部の雪害
1980年、1983年：ライン川、モーゼル川の洪水対策
1980年：イタリア南部の大地震
1990年：大嵐「ダリア」、「ビビアン」、「ヴィーブケ」による災害

このように、第3軍団は冷戦下の防衛だけでなく、国民の生活を守るためにも重要な役割を果たしました。

まとめ

ドイツ連邦陸軍第3軍団は、冷戦時代の中部ドイツ防衛を担い、幾多の変遷を経て規模を拡大し、数々の災害派遣にも従事した重要な組織でした。その歴史は、ドイツ連邦軍の変遷と、冷戦時代の緊張を物語る貴重な記録と言えるでしょう。

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