第30回都市対抗野球大会

1959年夏、日本の社会人野球界最大の祭典である都市対抗野球大会は、記念すべき第30回大会を迎えました。7月25日から8月2日までの期間、熱戦の舞台となったのは後楽園球場です。

この年は、大会の節目を祝う特別な措置がいくつか講じられました。中でも注目されたのは、一度は廃止されていた前年優勝チームへの推薦出場制度が、第30回記念大会として一年限りで復活したことです。これにより、前回大会で栄冠に輝いた日本石油（横浜市）は予選を経ることなく、堂々と開幕試合に登場しました。

さらに、大会規模も大幅に拡大されました。従来の大会より出場枠が5チーム分増やされ、史上最多となる30チームが全国各地から後楽園に集結しました。この出場枠の増加に伴い、実に9チームが都市対抗初出場というフレッシュな顔ぶれが見られました。一方で、長年にわたり大会を彩ってきた常連チームも多数出場し、新旧の実力チームが一同に会する、かつてない壮大なトーナメントが繰り広げられました。

激しい予選を勝ち抜いた精鋭30チームによるトーナメントを制し、栄光の黒獅子旗を手にしたのは、松山市代表の丸善石油でした。彼らは堅実な守りを持ち味とし、2回戦では推薦出場の前回王者・日本石油を破るという快挙を成し遂げるなど、着実に勝ち進みました。一方、決勝の舞台に勝ち上がってきたのは、岩手県釜石市代表の富士鉄釜石です。彼らは準々決勝、準決勝と、劇的な逆転勝利を重ねて決勝に進出し、多くの野球ファンを魅了しました。

決勝に進出した丸善石油と富士鉄釜石は、それぞれ四国地方、東北地方から初めて都市対抗の決勝に駒を進めたチームでした。そのため、この年の黒獅子旗が東北の勿来の関を越えていくのか、それとも四国の瀬戸内海を渡っていくのか、と大きな注目が集まりました。迎えた決勝戦は、これまでの両チームの勝ち上がりとは対照的に、互いに譲らない打撃戦となりました。試合は白熱した展開となりましたが、要所で効果的に得点を挙げた丸善石油が勝利を掴み取り、四国地方に初めて都市対抗野球の最高峰である黒獅子旗をもたらしました。

惜しくも敗れた富士鉄釜石が代表する東北勢は、この後も長く都市対抗の決勝舞台から遠ざかることとなります。次に東北勢が優勝を飾るのは、実に第77回大会（2006年）で秋田県のTDKが栄冠を手にするまで、「冬の時代」と呼ばれる長い期間が続きました。

この大会で最も活躍した選手に贈られる橋戸賞には、優勝した丸善石油の投手、西三雄が選ばれました。また、大会で優れた活躍を見せながらも惜しくも敗れたチームの選手に贈られる久慈賞は、準優勝の富士鉄釜石から一塁手の出沢政雄が受賞。そして、大会に貢献したチームに贈られる小野賞は、その劇的な勝ち上がりと東北勢初の決勝進出を果たした釜石市・富士鉄釜石チームに贈られました。

また、長年にわたり都市対抗野球を支えてきた選手たちにも栄誉が与えられました。10年連続出場を果たした選手として、大昭和製紙の上沖啓之捕手と、電電東京（熊谷組からの補強選手）の秋山光男外野手が表彰されています。

第30回大会は、記念大会としての特別措置、史上最多の出場チーム数、そして四国勢と東北勢による初の決勝戦という、多くの記憶に残る要素を持つ、日本の社会人野球史において特筆すべき大会となりました。

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