第34回都市対抗野球大会

第34回都市対抗野球大会

1963年夏、日本の社会人野球界最大の祭典である都市対抗野球大会は、第34回目を迎えました。この年の大会は、7月27日から8月4日までの9日間にわたり、野球の聖地ともいえる後楽園球場を舞台に熱戦が繰り広げられました。

大会概要と制度変更

今大会は、前年の第33回大会で廃止されていた前年度優勝チームの推薦出場制度が復活した点が大きな特徴です。これにより、前回大会で栄冠に輝いた日本石油（横浜市）は、地区予選を免除され、シードチームとして本大会に出場する権利を得ました。ただし、開幕試合を戦う義務はなくなり、1回戦の第4試合から登場するという形式が取られました。

出場チーム数は例年通り25チームで、各都市の代表が集いました。この中には、過去の実績から連続出場を果たした8チームの常連組と、初めて都市対抗の舞台に立つ4チームの新鮮な顔ぶれが含まれており、新旧勢力が入り混じる大会となりました。

波乱の展開と新たな主役

大会前の戦前の予想では、推薦出場で実力も高い日本石油、そして強豪として知られる熊谷組（東京都）や全鐘紡（大阪市）が優勝候補の本命として挙げられていました。しかし、大会は予期せぬ波乱に満ちた展開を見せます。優勝候補の一角である熊谷組と全鐘紡は、それぞれ2回戦で早々と姿を消すことになります。さらに、推薦出場で連覇を目指した日本石油も準決勝で敗退し、本命視されていたチームが次々と大会を去る結果となりました。

これにより、決勝戦には予想外の顔合わせが実現します。勝ち上がってきたのは、積水化学（京都市）と富士製鐵室蘭（室蘭市）でした。両チームとも、この大会が都市対抗野球大会の決勝に初進出となる歴史的な瞬間であり、新たな黒獅子旗の行方に注目が集まりました。

積水化学の栄冠と京都初の快挙

1963年8月4日に行われた決勝戦は、両チームにとって初の優勝をかけた緊迫した試合となりました。この激戦を制したのは、積水化学でした。積水化学は、効果的な投手の継投策が功を奏し、相手打線を抑え込みました。接戦をものにした積水化学が勝利し、見事チーム初優勝を飾りました。この優勝は、京都市に初めて都市対抗野球大会の頂点である黒獅子旗をもたらすという、地元にとっても歴史的な快挙となりました。

応援団コンクールの誕生

この第34回大会は、野球の試合だけでなく、スタンドでの応援にも新たな光が当てられた大会でもあります。今大会から、現在まで続く「応援団コンクール」が初めて実施されました。これは、各チームの応援団が繰り広げる創意工夫を凝らした応援パフォーマンスを評価するものであり、野球と一体となった都市対抗ならではの熱気をさらに高めるきっかけとなりました。

表彰とコンクールの結果

大会では、個人およびチームへの表彰も行われました。最も活躍した選手に贈られる橋戸賞には、優勝した積水化学の堤亨投手が選ばれました。惜しくも決勝で敗れた富士製鐵室蘭からは、佐藤進投手が久慈賞を受賞しています。また、最も優秀なチームに贈られる小野賞は、初優勝を遂げた京都市・積水化学チームに授与されました。

記念すべき第1回応援団コンクールでは、河合楽器（浜松市）が最優秀賞に輝きました。優秀賞は日本石油、敢闘賞はリッカーミシン（東京都）、そして特別賞はトヨタ自動車（豊田市）が受賞し、グラウンド外のもう一つの戦いも盛り上がりを見せました。

第34回都市対抗野球大会は、推薦出場制度の復活、本命チームの総崩れといった波乱、そして積水化学の初優勝と京都市初の黒獅子旗獲得、さらに応援団コンクールの創設と、多くの「初めて」や予想外の展開に彩られた、記憶に残る大会となりました。
となりました。

もう一度検索