第35回都市対抗野球大会

第35回都市対抗野球大会

1964年（昭和39年）、日本の首都・東京が世界的な祭典、オリンピックの舞台となる記念すべき年に開催されたのが、第35回都市対抗野球大会です。7月25日から8月4日までの期間、後楽園球場を舞台に、例年以上の熱気と規模で開催されました。

大会の概要と特色

この第35回大会は、戦後日本が復興を遂げ、新たな時代へと踏み出す象徴としての東京オリンピック開催を祝う意味合いも持ち、大会の規模が大幅に拡大されました。従来の参加チーム数から7チームが増加し、史上最多となる32チームが出場。これにより、全ての参加チームが優勝旗を手にするためには5回の勝利が必要となる、より公平で過酷なトーナメント方式が採用されました。

また、この大会では特別な出来事もありました。戦後、アメリカの統治下に置かれていた沖縄から初めてチームが招待され、那覇市の琉球煙草が都市対抗の舞台に立ちました。球場に集まった観衆は、沖縄からの参加チームに惜しみない温かい拍手を送り、日本の復興と一体感を象徴する一幕となりました。

一方で、都市対抗の常連であり、14年連続出場という記録を続けていた強豪、東洋レーヨンが予選で敗退するという波乱も発生しました。これは、参加チームの実力が拮抗し、本戦への道のりがいかに険しいかを示す出来事でした。

大会本戦では、2回戦において2試合が引き分けとなり再試合が行われました。これにより、当初予定されていた試合数が増え、合計34試合が繰り広げられる、過去最大規模の大会となりました。

激戦を制した日本通運の初優勝

白熱した戦いを勝ち抜き、この記念すべき大会を制したのは、浦和市代表の日本通運でした。決勝の相手は、都市対抗の歴史に名を刻む古豪、川崎市代表の日本コロムビア。決勝戦は緊迫した投手戦となり、両チームの投手が力投を見せましたが、日本通運は効果的な継投策を用いてこの難敵を破り、チームにとって初の栄冠である黒獅子旗を獲得しました。

記憶に残る選手たち

大会では多くの選手が輝きを見せました。最高殊勲選手に贈られる橋戸賞は、日本通運の優勝に大きく貢献した田中章投手が受賞。惜しくも決勝で敗れた日本コロムビアからは、敢闘賞にあたる久慈賞に近藤重雄投手が選ばれました。また、鮮烈な印象を残した選手として、北海道拓殖銀行の田中公雄投手が小野賞と打撃賞を同時受賞。さらに、熊谷組（立正佼成会）の黒江幸弘遊撃手は、この大会で創設された特別賞の最初の受賞者となり、打率.667（18打数12安打）という驚異的な成績で首位打者賞も獲得し、その名を轟かせました。

その他の打撃賞は、日本鋼管（日本石油）の枝松道輝二塁手が受賞しています。

応援も熱く

都市対抗野球の魅力の一つである応援合戦も、この大会で大いに盛り上がりました。応援団コンクールでは、北海道拓殖銀行が最優秀賞を獲得。優秀賞は日本通運、敢闘賞は松下電器、特別賞は河合楽器がそれぞれ受賞し、グラウンドの選手だけでなく、スタンドからの熱いエールも大会を彩りました。

第35回都市対抗野球大会は、日本の新たな時代の幕開けを祝うかのように、規模、参加チームの顔ぶれ、そして繰り広げられた熱戦の全てにおいて、歴史に残る大会となりました。浦和市・日本通運の初の黒獅子旗獲得は、その後のチームの歴史においても重要な一歩となったのです。

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