第36回全国高等学校野球選手権大会

第36回全国高等学校野球選手権大会：真夏の甲子園と優勝旗盗難事件

1954年8月13日から8月22日まで、甲子園球場を舞台に第36回全国高等学校野球選手権大会が開催されました。この大会では、数々のドラマと記憶に残る出来事が繰り広げられました。

大会の概要

この大会で特筆すべきは、高鍋高校（宮崎県）が初出場を果たしたことです。これにより、宮崎県勢としても初めて甲子園の土を踏むこととなり、当時未出場県として残っていたのは沖縄県のみとなりました（ただし、当時沖縄県はアメリカの施政下にありました）。

試合結果のハイライト

大会は熱戦の連続で、各試合で様々なドラマが生まれました。

1回戦：中京商が水戸一を3-0で下し、鶴見工が高鍋を16-5で圧倒。早稲田実が小倉を5-0で破るなど、強豪校が順当に勝ち進みました。
2回戦：北海が福島商に6x-5でサヨナラ勝ち。静岡商も高松商に4x-3で勝利。中京商は松商学園との激戦を7-6で制しました。
準々決勝：静岡商が泉陽を2-1で、新宮が北海を延長17回の激闘の末1-0で下しました。中京商は三原を14-1と圧倒し、高知商が早稲田実を5x-4で破りました。
準決勝：中京商が新宮を4-2で、静岡商が高知商を3-1でそれぞれ下し、決勝へと駒を進めました。
決勝：中京商が静岡商を破り、見事優勝を果たしました。

大会本塁打

大会中には、以下の本塁打が記録されました。

第1号：紺野幸次（福島商）
第2号：関森正治（高松商）
第3号：平田晟（泉陽）

優勝旗盗難事件

大会後、中京商で前代未聞の事件が発生します。11月下旬、校長室に飾られていた真紅の大優勝旗が盗まれるという事態が発生しました。旗竿は残されていたものの、肝心の旗の部分が別の旗とすり替えられていたのです。

学校は警察に通報し、全校生徒を挙げての捜索が開始されました。内部犯行も疑われ、野球部員も事情聴取を受けるなど、騒然とした状況となりました。優勝の立役者である中山俊丈は、「汗水たらして、泣きながら猛練習して、そうやって手にした優勝旗を盗ったりなんかするものか。」と憤慨したと伝えられています。

学校職員や生徒たちは、学校周辺の田畑や山、公園、寺などを連日捜索しましたが、手がかりは見つかりませんでした。中京商関係者の焦燥は募り、「咎めないので返してほしい」という新聞広告を出すに至りました。ついには占い師に旗の場所を占ってもらうなど、なりふり構わぬ捜索が続けられました。

しかし、年が明けても旗は見つからず、新調も検討され始めた頃、盗難から85日後の2月、学校から約600m離れた川名中学校の床下から、風呂敷に包まれた状態で発見されました。犯人は特定されないまま、事件は迷宮入りとなりました。

この事件は、当時の社会に大きな衝撃を与え、高校野球の歴史に汚点を残す出来事として記憶されています。

関連項目

* 第26回選抜高等学校野球大会

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