第45回世界遺産委員会

第45回世界遺産委員会の概要

第45回世界遺産委員会は、2023年9月10日から25日にかけて、サウジアラビアのリヤドで開催されました。当初、2022年6月にロシアのタタールスタン共和国カザンで開催される予定でしたが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で延期となり、その後、開催地がリヤドに変更されました。

この委員会では、2022年と2023年の2年分の新規登録審査をまとめて行う拡大会合となり、文化遺産33件、自然遺産9件の新規登録が決定しました。また、先行する臨時会議で緊急登録された文化遺産3件と合わせて、世界遺産の総数は1199件となりました。さらに、ルワンダが新たに世界遺産を保有する国となりました。

会議は、アル・ファイサリア・センター内のアル・ファイサリア・ホテルとプリンス・ファイサル・ホールで行われました。当初予定されていたキング・アブドゥルアズィーズ国際会議場とキング・アブドゥルアズィーズ国際文化センターからは変更されました。9月23日はサウジの建国記念日であったため、委員会は休催となりました。

開催地と日程の変更

開催地と日程の変更は、ロシアによるウクライナ侵攻が大きな要因となりました。ユネスコ加盟国からの動議や執行委員会の特別会合を経て、ロシアでの開催は事実上不可能となりました。ロシアは開催を断念し、サウジアラビアが議長国を引き継ぐことになりました。

このような状況下、ユネスコは、委員国間の協議に基づき、開催地の変更を決定しました。しかし、この過程では、ロシア寄りの姿勢を示す国々からの反対も予想され、複雑な調整が必要とされました。また、変更手続きの期限が定められていたため、迅速な対応が求められました。

ウクライナ問題の影響

ウクライナ問題は、世界遺産委員会に大きな影響を与えました。ロシアによる攻撃は、ウクライナの文化遺産にも及んでおり、ユネスコはこれらの保護に力を注ぎました。特に、オデーサ歴史地区は緊急登録され、危機遺産にも指定されました。しかし、ロシアはこれに強く反発し、委員会の決定を批判しました。

また、ウクライナの文化遺産の破壊に関する問題は、世界遺産委員会だけでなく、ユネスコの執行委員会や総会でも議論されました。ポーランドやリトアニアなど、ウクライナを支援する国々が積極的に働きかけました。さらに、ロシアによる文化浄化や歴史改ざんなどの問題も指摘され、国際社会からの非難を浴びました。

新規登録と危機遺産

第45回世界遺産委員会では、多くの新規登録が決定しました。自然遺産、複合遺産、文化遺産と多岐にわたり、それぞれの分野で新たな価値が認められました。一方、危機遺産については、既に指定されている物件に加えて、新たな物件も指定されました。これには、自然災害や人為的な破壊行為によるものが含まれており、世界遺産が直面する様々な脅威が浮き彫りとなりました。

危機遺産に指定された物件の中には、グレートバリアリーフやヴェネツィアのように、以前から危機遺産指定が検討されていたものもあります。これらの指定は、環境問題や観光公害など、様々な要因によってもたらされています。

その他の議題

委員会では、世界遺産の持続可能な管理に関する議論も行われました。観光公害対策、気候変動への対応、地域社会との共生など、多くの課題が提示されました。また、世界遺産の資源利用に関する新たな方針が示され、企業による持続可能性のための世界基準が策定されました。さらに、AIを文化遺産の保存に活用する提案や、デジタル技術を保全報告に活用する提言なども議論されました。

委員会の様子

委員会は、サウジアラビアの女性王女が議長を務め、女性の社会進出がアピールされました。また、各国の委員が自国の国章ではなくウクライナ国旗のバッジを着用するなど、ウクライナとの連帯を示す場面も多く見られました。委員会は、数々の議題をこなしつつ、閉幕しました。

委員会後の動向

委員会後には、世界遺産条約締約国会議が開催され、新たな委員国が選任されました。また、世界遺産委員会臨時会議が開催され、2024年の第46回世界遺産委員会の開催地がインドに決定しました。

世界遺産は、その文化的価値や自然的な価値だけでなく、平和と国際協力の象徴でもあります。しかし、戦争や紛争、環境問題、経済格差など、多くの課題に直面しています。世界遺産の保護は、これらの課題に取り組む上で、重要な役割を果たすと言えるでしょう。

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