第46親衛夜間爆撃航空連隊

第46親衛夜間爆撃航空連隊：「夜の魔女」たちの戦場

第46親衛夜間爆撃航空連隊、通称「夜の魔女」は、第二次世界大戦下のソビエト連邦において、その名を歴史に刻んだ女性パイロット部隊です。マリーナ・ラスコーヴァ少佐の提唱により設立され、エヴドキヤ・ベルシャンスカヤ少佐率いるこの部隊は、ドイツ軍から「Nachthexen（夜の魔女）」と恐れられ、数々の伝説を生み出しました。

結成と任務

大祖国戦争勃発直後、多くの女性パイロットから前線での戦闘参加を希望する声がラスコーヴァのもとに殺到しました。この熱意を受け、彼女は女性パイロットによる特殊部隊の創設を提案。幾多の反対を押し切り、スターリン書記長からの承認を得て、1941年秋、志願兵の募集が開始されました。こうして、17歳から22歳までの115名で構成された第588夜間爆撃連隊が、1942年5月27日に正式に編成。6月12日には、最初の作戦行動に出撃しました。

当初、第4航空軍の下で活動した同部隊は、1943年2月に第46親衛夜間爆撃航空連隊に改称され、同年、タマン半島での戦功により「タマン」の称号が加えられました。その任務は、ドイツ軍に対するハラスメント爆撃と精密爆撃、そしてパルチザンへの物資や郵便物の輸送でした。

戦闘と戦果

最大で40機編成のこの部隊は、23,000回以上の飛行任務を遂行し、3,000トン以上の爆弾を投下したとされます。その戦果は、ソ連空軍の中でも最も輝かしいものの一つであり、23名の隊員がソ連邦英雄の称号を与えられました。結成から終戦まで、各パイロットは800回以上の出撃を達成し、その間30名が戦死しました。

Po-2と「夜の魔女」戦法

主力機として使用されたのは、1928年設計のPo-2連絡機でした。旧式機であったPo-2は、練習機や連絡機、農薬散布などに使われていた複葉機であり、航空史上最も生産された機体の1つでもあります。6発の爆弾を搭載可能で、一晩に複数の爆撃任務をこなすことができました。

旧式機であることを逆手に取り、敵の目を欺いたのです。Po-2の最高速度は、ドイツ空軍の主力戦闘機であるメッサーシュミットBf109やフォッケウルフFw190の失速速度よりも低く、撃墜が困難でした。爆撃目標に接近すると、エンジンをアイドル状態にして滑空し爆弾投下を行いました。この際に発生する独特の風切り音は、ドイツ兵たちに「ホウキの音」と聞こえ、「夜の魔女」という異名がつけられたと言われています。ドイツ軍では、「夜の魔女」1機撃墜につき鉄十字章が授与されたという逸話も残っています。爆弾は機体の腹部に吊るされ、小型のものは機内に積んで手投げで投下することもありました。爆弾には当初、「母国のために！」といったスローガンが書かれていましたが、後に戦死した隊員の名前が書かれるようになりました。

低空飛行での作戦が多かったことから、パイロットたちは落下傘を装備していませんでした。

隊員と指揮官

隊員の大半は若い女性たちでした。航法士の多くは女子大学生で、少年風の髪型を強制され、三つ編みを許されるにはラスコーヴァからの特別な許可が必要でした。

エヴドキヤ・ベルシャンスカヤ少佐を隊長として、イリーナ・ラコボルスカヤ少佐が参謀長を務め、エヴゲニヤ・ジグレンコやタチヤナ・マカロワなど、多くの女性たちが勇敢に戦い抜きました。

他に有名な隊員としては、ヴェーラ・ベリク、ルフィーナ・ガシェワ、ポリーナ・ゲルマン、ナターリヤ・メクリン、ナジェージダ・ポポワ、エヴゲニヤ・ルドネワ、イリーナ・セブロワなどが挙げられます。

その他の女性部隊

第588連隊以外にも、1941年10月8日の命令により、女性パイロットのみで構成される3つの航空隊が編成されました。第586連隊（Yak-1戦闘機運用）、第587連隊（双発急降下爆撃機運用）、そして第588連隊（夜間爆撃運用）です。これらの部隊には、エカテリーナ・ブダノワやリディア・リトヴァクといった著名なパイロットも所属していました。

夜の魔女の遺産

「夜の魔女」たちの戦いは、困難と犠牲に満ちたものでしたが、ソ連の勝利に大きく貢献しました。彼女たちの勇気と献身は、後世に語り継がれるべき、真の英雄譚です。その業績は、多くの書籍や映画で取り上げられ、現代においても世界中の人々に感動を与え続けています。

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