第5世代移動通信システム

第5世代移動通信システム（5G）

第5世代移動通信システム、略して5Gは、国際電気通信連合（ITU）が定める「IMT-2020」基準に基づいて設計された最新の無線通信システムです。これにより、従来の通信技術に比べて、はるかに高速で大容量のデータ通信、低遅延で高信頼性の通信および多数のデバイス同時接続が可能となります。

1. 5Gの要素

ITU-Rは5Gの実現に向けて、高速大容量通信（eMBB）、低遅延通信（URLLC）、多数の機器同時接続（mMTC）の3つの主要な要素を定義しています。これによって、さまざまな環境や要件にお応えすることが可能になります。

1.1 高速大容量（eMBB）

5Gは、急増するデータ通信の需要に対応するため、高速で大容量の通信を実現します。具体的には、従来の周波数帯より高い帯域を使用することで、高速通信を実現し、通信混雑や遅延の問題を軽減します。しかし、高周波数帯の特性により、電波の直進性が増すため、着信範囲が狭くなる傾向があり、これを補うために小型基地局の設置が不可欠です。これにより、通信速度はNTTドコモの3.4Gbps、auの2.8Gbps、ソフトバンクの2.0Gbpsに達しました。

1.2 高信頼低遅延（URLLC）

従来の通信技術では難しかった、極めて低遅延で信頼性の高い通信を実現します。基地局に近い場所にサーバーを配置し、期未確な通信を実現する「モバイルエッジコンピューティング」が導入される予定です。これによりデータ量が削減され、安定した通信保証が可能になります。

1.3 多数同時接続（mMTC）

1台の基地局から多くの端末が同時に接続できるようになります。これにより、家庭や企業内で最大100台ものデバイスやセンサーが同時接続でき、IoTなどの新しい技術の展開が期待されています。

2. 導入状況と展開

5Gは、既存のLTEとの互換性を保持しつつ、6 GHz以上の周波数帯も活用する新たな無線通信手法を採用しています。5Gサービスでは、SA（Standalone）とNSA（Non-Standalone）の2つの運用構成が存在します。SAは5G単独で運用される一方、NSAはLTEの既存のインフラに依存します。

日本では、2014年に「第5世代モバイル推進フォーラム」が設立され、技術の研究と標準化が進んでいます。NTTドコモは2019年にプレサービスを開始し、商業サービスを2020年に展開しました。これにより、様々な業界での活用が進むことが期待されています。

3. 5Gのもたらす変革

5Gの導入は、VR（バーチャルリアリティ）、AI（人工知能）、自動運転技術など、これまでの常識を超える多くのイノベーションを引き起こすと予測されています。今後、5Gを基盤とした様々なサービスや新しい産業の創出が見込まれるほか、スマートシティや完全自動運転車など、我々の生活に大きな影響を与えることが期待されています。

4. 世界の5G状況

世界各国でも5Gの取り組みが進んでいます。中東のカタールではオレドーが商用5Gサービスを発表し、韓国やアメリカでも同様の動きが見られました。しかし、通信速度に関する各社の主張と実際の速度の乖離が見られる例もあり、品質の維持が課題となっています。

5. 結論

5Gは私たちの通信環境を根本から変革し、新しいビジネスモデルや生活スタイルを提供する可能性を秘めています。技術の進展と共に、より安全で快適な社会の実現が期待されています。

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