第5期順位戦

第5期順位戦と第10期名人戦

第5期順位戦は1950年6月から1951年3月にかけて、また第10期名人戦は1951年3月から5月にかけて実施されました。順位戦は将棋界の最高峰タイトルである名人戦への挑戦者を決めるための重要な予選棋戦です。第10期名人戦では、この順位戦を勝ち抜いた棋士が当時の名人に挑みました。本項目では、これら二つの棋戦について、その概要と特筆すべき点、結果を合わせて詳述します。

第10期名人戦 七番勝負の結果

第10期名人戦の七番勝負は、当時の名人位保持者であった木村義雄名人と、第5期順位戦を勝ち抜き挑戦者となった升田幸三八段の間で行われました。熱戦の結果、木村名人が4勝2敗で升田八段を下し、名人位を見事に防衛しました。

ルールの大きな改定

この第5期順位戦と第10期名人戦が行われた年度は、将棋界の根幹をなす順位戦および名人戦のルールに、いくつかの重要な変更が加えられたことで知られています。これらの改定は、その後の棋戦制度に長期的な影響を与えることとなりました。

主な改定点は以下の通りです。

名人挑戦者決定方法の変更: これまで実施されていた名人挑戦者決定戦は廃止となりました。A級順位戦でトップの成績を収めた棋士が、自動的に名人への挑戦者となる方式に改められました。ただし、A級で複数の棋士が同率で首位に並んだ場合は、改めて3番勝負を行い挑戦者を決定することとなりました。

各クラスの対局数と持ち時間: A級は参加棋士全員による総当たりリーグ戦形式となりました。B級以下のクラスについては、公平性を考慮し、くじ引きによって対戦相手を決定し、各棋士が年間12局を指すことになりました。持ち時間については、全てのクラスで一律7時間と定められました。

同率者の取り扱い: 昇級や降級に関わる同率者が発生した場合の決定方法について、この期に限り簡便な方法が取られました。しかし、翌期以降は、前期の順位戦成績に基づき、上位の棋士が優先されるという明確なルールが導入されました。

昇降級制度の拡大: これまでA級からB級への降級のみが存在していましたが、この期から順位戦に参加する全てのクラス（A級、B級、C級1組、C級2組）において降級制度が適用されることになりました。基本的な昇降級人数は、A級とB級の間が昇級3名・降級3名とされましたが、この期はA級から4名が降級となりました。B級以下の各級間では、原則として昇級2名・降級2名（C級2組から順位戦参加資格を失う降級枠は1名）となりました。特にC級2組から降級した棋士は、一度奨励会に編入され、四段の資格で対局を行うことになります。そこで1年間で五割以上の成績を収めれば、C級2組への復帰が認められるという規定が設けられました。

アマチュア参加特典の廃止: 第3期順位戦以降、全日本アマチュア名人戦の上位入賞者（1位から4位）には、希望すれば順位戦（C級2組）に参加できるという特典が与えられていましたが、この第5期をもって廃止されました。

「前名人」称号に関する規定: 「前名人」という称号を使用できるのは、現名人である木村義雄よりも前に名人を務めた棋士に限られることになりました。この称号を使用する資格を失った場合は、八段の資格を有することとされました。

第5期順位戦 クラス別結果概要

第5期順位戦における、各クラスの昇級・降級枠は以下の通りでした。（※B級以下は順位制なし）

A級: 名人挑戦者決定（1名）、降級（4名）
B級: 昇級（3名）、降級（2名）
C級1組: 昇級（2名）、降級（2名）
C級2組: 昇級（2名）、降級（1名）

これらの制度変更は、以降の順位戦および名人戦のあり方を大きく方向付け、現代にも繋がる棋士の昇降級システムの基礎を築いた点で、将棋史における重要な画期となりました。

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